2023 Fiscal Year Research-status Report
膝前十字靭帯再建術後の完全なスポーツ復帰を目指した多施設共同研究
Project/Area Number |
23K10402
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中前 敦雄 広島大学, 病院(医), 准教授 (60444684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 伸生 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (30294383)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 膝 / 前十字靭帯 / スポーツ復帰 / 多施設共同研究 / 再断裂 / 患者立脚型評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、膝前十字靭帯(ACL)再建術後の完全なスポーツ復帰を目指した多施設共同研究であり、術後に受傷前と同じレベルへのスポーツ復帰を可能とする要因の探索が研究目的となる。ACL再建後の完全なスポーツ復帰の失敗、つまりは術後の患者立脚型評価スコア低値やACL再建後の再断裂発生については多因子であることが予想できるが、多くの因子の分析を行うことは、単一施設では時間的・体制的にもほとんど不可能である。しかし、多施設共同研究では多因子を分析するために必要な多くの症例数を短期間で集めることが可能であり、当グループではすでにその体制は広島臨床ACL多施設共同研究プロジェクトとして整っているため、さらなるデータ収集とともに術後経過の分析を開始した。 本研究では手術所見や治療法、膝の徒手および器機計測所見のほか、患者立脚型評価としてKnee injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS))やIKDC score、さらにはLysholm scoreやスポーツ活動性(Tegner activity scale)も継続して情報収集している。また本研究の独創的な調査項目の1つにpivot shift testにおける患者さん本人の主観的な怖さを示す4段階のapprehension gradingがある。本多施設共同研では、pivot shift testの通常のgradingではなく、この新規のapprehension gradingの方が、術後1年の時点で患者立脚型評価に大きく影響を与えることが示された。また術前pivot shift testの通常のgradingやapprehension gradeが大きい例、女性、内側半月板損傷の著明な例では、術後にもpivot shift testのapprehensionが残存しやすいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本多施設共同研究については、当グループではすでにその体制は広島臨床ACL多施設共同研究プロジェクトとして整っており、膝の手術所見や術式(ACL、半月板、関節軟骨)、膝の徒手および器機計測所見、患者立脚型評価情報などは継続して収集可能であった。2023年度においては、このACL多施設共同研究の結果を8つの学会で報告した。 前述の様に、本研究の独創的な調査項目の1つに、pivot shift testにおける患者さん本人の主観的な怖さを示す4段階のapprehension gradingがある。ACL多施設共同研究での665例を検討した結果、pivot shift testの通常のIKDC gradingではなく、この新規のapprehension gradingの方が、術後1年の時点で患者立脚型評価や術後のスポーツ活動性のスコアに大きく影響を与えることが示された。また、このpivot shift apprehensionが術後に残存する危険因子について663例で検討した結果、術前のpivot shift testの通常のIKDC gradingやapprehension gradeが大きい例、女性、内側半月板損傷の著明な例が術後のpivot shift testのapprehension残存の危険因子であることが分かった。さらにACL再建方法については、1束ACL補強術、1束再建術、2重束再建術の術後1年時の臨床成績について565例で検討した結果、術後の膝前方不安定性の患健側差には各術式間に有意差はなかったが、pivot shift testのIKDC gradingでは1束ACL補強術が良好な結果であったことを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
広島臨床ACL多施設共同研究プロジェクトグループは現在10施設あり、継続して臨床結果の情報収集を行うことが可能であった。今後もACL多施設共同研究の術後経過の情報、および新規ACL損傷例の情報を引き続き収集し、上記の多項目の分析を行なっていく。さらに、術後1年時の患者立脚型評価低値の危険因子については、pivot shift testにおける新規のapprehension gradingを加えて、複数の因子についてロジスティック回帰分析を行なうほか、若年者と中高齢者との違いについても検討する。また、pivot shift testの通常のIKDC gradingにおける術後1年時のpivot現象残存の危険因子についても、ロジスティック回帰分析にて検討する。術後の膝前方不安定性が大きくなる危険因子については、重回帰分析にてその要因を探索する。また、若年者のACL再建後に膝不安定性の残存や再断裂が多い傾向があるようであり、これについても年齢と性別の関連を詳細に検討する。今後に注力する点としては、術後2年における臨床成績の収集率を上げることが重要と考える。各施設に定期的に連絡を行いながら、術後2年時の情報収集を積極的に行ない、上記の各危険因子や再断裂の要因について、より詳細な検討を行なっていく。
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Causes of Carryover |
理由:ウェブデータベースソフトを使用しての情報収集を延期し、現状での基幹病院(広島大学病院)におけるコンピューターでの一元管理を継続したため、初年度においてウェブデータベースソフトの支出が不要となり、繰越金が発生した。 計画:情報収集が順調で、研究結果が多く出つつあるため、国際学会を含めた学会出張費として使用する予定である。また英語論文作成をすでに行なっており、英文校正費の使用が2年目から必要となる予定である。
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