2023 Fiscal Year Research-status Report
Effects of tongue stimulation on ADHD disease model rats
Project/Area Number |
23K10420
|
Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
申 敏哲 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (70596452)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 舌刺激 / ADHD / 認知能力 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ADHDモデルラットを用いて、舌への体性感覚のみの刺激が脳の活性化や多動性、社会性や認知能力に及ぼす影響を、記憶の中枢であるラットの海馬をターゲットにして研究を進めている。当該年度では、 Methylazoxymethanol(MAM)曝露ADHDモデルラットとの比較の為にバルプロ酸ナトリウム(Valproic acid; VPA)の投与により作製したADHDモデルラットに対する舌刺激の影響を検討した。VPAは一般的に抗痙攣薬や鎮静薬として使用されているが、神経発達期に曝露されると生後の脳機能への影響が懸念されている有機化合物であり、母体にVPAを投与することで自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder; ASD)や注意欠陥多動性障害(attention deficit/hyperactivity disorder; ADHD)等の神経発達障害で見られる成熟の遅延、体重の減少、運動発達の遅延、社会行動異常、学習障害、記憶障害等を示すモデル動物が得られることが確立されている。本研究では、VPA曝露ラット群で学習・認知機能の低下が見られ、その低下はVPA曝露ラット群に舌触・圧覚舌刺激を行った群で学習・認知機能低下の改善または改善傾向が見られた。そのメカニズムを調べるために、細胞増殖、成長、分化と関係があるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の発現を記憶の中心部である海馬領域で検討した。一部の結果では、VPA曝露ラット群でMAPKの発現が増加し、VPA曝露ラットに舌触・圧覚舌刺激を行った群では、MAPK発現増加の抑制傾向が確認できた。今後は、Methylazoxymethanol(MAM)曝露ADHDモデルラットを用いて多動性や社会性、認知・学習能力の変化をVPA曝露ADHDモデルラットと比較分析する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度では、Methylazoxymethanol(MAM)投与により作製したADHDモデルラットを用いて、ADHDモデルラットに対する舌刺激の影響を検討する予定であった。しかし、本研究課題の前に申請した「舌への体性感覚刺激が認知症病態動物モデルラットに及ぼす影響」に関する研究が延長となり、その結果の一部が本研究にも必要であったため、もう一つの課題に多くの時間を費やすことになっている。また、バルプロ酸ナトリウム(Valproic acid; VPA)の投与によってもADHDモデルラットが作成されるため、結果を比較するために一部の分析を進めた結果、研究の遅れが発生している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、Methylazoxymethanol(MAM)の投与により作製したラットをADHDモデルラットとして利用し、舌への体性感覚刺激が脳の活性化や多動性、社会性、認知能力に及ぼす影響を、行動学的手法と分子生物学的手法を用いて検討する。特にそのメカニズムを、記憶の中枢であるラットの海馬をターゲットにして分析する予定である。ADHDモデルラットにおける舌への体性感覚刺激がラットの認知・学習能力にどのような影響を与えるかは、Water-mazeテスト、Step-Downテスト、Y-mazeテストで行い、自発活動性や多動性、社会性での影響は、Open-fieldテストと社会性テストで評価し、ADHDモデルラットに対する舌刺激の効果を検討する。また、舌刺激による行動変化と海馬の機能変化との関係を明らかにするため、神経細胞の活性化マーカーであるc-Fos、神経の成長因子であるBrain-derived neurotrophic factor(BDNF)、刺激による神経のシナプス可塑性の変化を示すProtein kinase C(PKC)alphaとMitogen-activated protein kinase(MAPK)を用いて分析し、そのメカニズムを解明する。さらに、BDNF、PKC-alpha、MAPKなどは神経細胞の分化や再生、シナプス可塑性と関係があると報告されているため、神経細胞の新生についてもBromodeoxyuridine(BrdU:増殖細胞のマーカー)を用いて分析することで舌への体性感覚刺激がADHDモデルラットの海馬神経細胞の新生と分化にどのような影響を与えるかを検討する。
|
Causes of Carryover |
当該年度においては、「舌への体性感覚刺激が認知症病態動物モデルラットに及ぼす影響」に関する研究が本研究課題の前に申請され、その研究が延長されていた。その研究を優先的に進めたことと、その研究テーマが本研究のテーマと密接に関連していることから、一部の研究試薬等が共用され、研究費の無駄な使用を避けることができた。その結果、次年度の研究費の使用額が生じた。また、本研究を申請する際に以前の研究テーマの残り試薬などを使用することを想定したため、研究費の申請金額を抑えることができた。今後は、動物の購入や行動実験装置の製作に研究費を使用する予定である。
|