2023 Fiscal Year Research-status Report
ヒト二足歩行の速度低下に伴う自動性の低下と超低速歩行の随意性の高い神経制御機構
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23K10477
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 康之 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 講師 (30631874)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ヒト二足歩行 / 低速歩行 / 自動運動 / 神経制御機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,歩行計測実験および数理モデル解析により,これまで十分に実施されてこなかった超低速度の歩行の神経制御メカニズムの理解を試みるものである. 2023年度は,比較的簡易な歩行モデル(コンパスモデルおよびバネ質点モデル)を用いたモデル解析を行った.これにより,歩行速度の低下に必要な歩幅の短縮と歩行リズムの変調が,通常速度の歩行で見られる受動的な歩行特性においては実現が難しいことを示した.また一方で,通常速度の歩行で重要な役割を果たしていると考えられる脊髄反射回路のみを有する神経筋骨格系モデルの歩行シミュレーション実験を実施し,反射回路に含まれる円滑な歩行を実施するための機構が,超低速歩行時に必要な両脚支持期の延長を阻害することも明らかにした.これらの知見は,通常歩行を円滑に実施する際に重要な役割を果たしていると考えられる受動的な制御メカニズムのみでは超低速歩行の実施は困難であり,超低速歩行では,例えば中枢神経系を介した能動的なフィードバック制御がより重要な役割を果たすことを示唆する. 本年度は,さらに,モーションキャプチャシステム,脳波計,筋電計測,床反力計を用いた歩行計測実験を行った.通常歩行中と超低速歩行中に計測したこれらのデータを解析することで,各速度における歩行キネマティクスの差異だけではなく,キネティクス,およびその背後にある脳波や筋活動パターンの差異を明らかにしつつある.各差異の因果関係を詳細に理解することにより,速度変化に伴う歩行制御メカニズムの詳細な理解が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は,研究計画に記載されていた比較的簡易な歩行モデル(コンパスモデルおよびバネ質点モデル)を用いたモデル解析,歩行計測実験,および神経筋骨格系モデルの数値シミュレーション実験を行った. モデル解析からは,研究開始時に想定されていた結果に近しい結果が得られるとともに,計測実験においては,計測が順調に進行し,歩行速度の低下に伴う身体キネマティクス,キネティクス,脳波,および筋活動パターンの差異が明らかになりつつある. 以上のように,研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では,今後,2023年度にモデル解析により得られた知見をより詳細な神経筋骨格モデルへ応用し,超低速で歩行可能な歩行のモデルの構築および数値シミュレーション,および,超低速歩行計測実験の継続的な実施と摂動に対する応答実験を行う予定である. 超低速で歩行が可能な神経筋骨格モデルの構築を通して,歩行の超低速化のために必要な制御メカニズムの明確化を目指すとともに,計測実験によって得られる知見とモデルの比較検討により,ヒト歩行運動の制御メカニズムに関する正しい理解を目指す.
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Causes of Carryover |
海外出張の計画が翌年へ変更になった. また,計測機器の修理計画(および,そのための物品購入)が変更になり,翌年に使用する計画となった.
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