2023 Fiscal Year Research-status Report
肩関節痛・肩関節疾患発症予防を目的とした肩甲骨運動異常の改善プログラムの開発
Project/Area Number |
23K10497
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
木藤 伸宏 広島国際大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (40435061)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 肩甲骨運動異常 / 上肢挙上運動 / 肩甲骨運動パターン / 筋シナジー / エクササイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
胸郭上に浮遊する自由度に富んだ肩甲骨を安定させ、上腕骨と協調した動きを実現するためには、複数の筋を協調的に働かせ、かつ、それぞれが適切な筋張力を発揮する必要がある。ヒトの運動は中枢神経系からのmotor コマンドに始まり、まず脊髄レベルに存在する複数の筋シナジーを目的の動作に合わせて (それぞれを柔軟に統合・分離しながら) 駆動し、筋シナジーに含まれる筋のα運動ニューロンを活性化させ、運動単位を動員・発火させることで適切な筋張力を生み出す。故にscapular dyskinesisの発生メカニズムとして以下の仮説が挙げられる。1つは筋シナジーの空間的・時間的構造の異常により適切な筋の協調パターンの生成に問題が生じている。 2023年度は、Scapular dyskinesis testを使用してscapular dyskinesisを有する個人 (SD群) と、有さない個人 (正常群) を対象として、肩甲骨と肩甲上腕関節周囲筋の筋シナジーの空間的・時間的構造の異常により適切な筋の協調パターンの生成に問題が生じているか否かを検討した。肩甲骨面上肢挙上動作時の表面筋電図(僧帽筋上部・中部・下部線維、前鋸筋、三角筋前部・中部線維、上腕二頭筋、棘下筋)を計測し、非負値行列因子分解を使用して筋シナジーの空間的構造と時間的構造を算出し、群間で比較した。その結果、正常群とSD 群の筋シナジーの空間的構造、時間的構造ともに有意差はなかった。SD群はさらに上肢挙上時にscapular dyskinesisを有する個人 (挙上時SD群)と、上肢降下時にscapular dyskinesisが生じる個人 (降下時SD群) に細分化して、サブ解析を行なった。しかし、結果は同様で3群間に有意差はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肩甲骨運動異常の原因として、筋シナジーの解析の研究を行う必要があり、それを実施した。その中で肩甲骨運動異常のスクリーニングテストの再検討が必要であることが分かり、研究協力者と討論する必要があった。そのため、当初計画したスケジュールよりも被験者の募集が遅れている。 さらに肩甲骨および肩甲上腕関節周囲筋の筋シナジー解析で、今回購入したEMGセンサで計測する筋数を増やしたため、MAtlabプログラムが上手く作動せず、そのためのプログラム修正に時間がかかった。現在は、それは改善し、プログラムは正常に作動している。
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Strategy for Future Research Activity |
肩甲骨運動異常のスクリーニング法はすでに確立し、被験者の選定および介入はすでに開始している(現時点では3名に介入)。被験者は、特に前鋸筋と僧帽筋下部の運動単位の減少が認められた者を優先的にエクササイズ介入群としている。すでに5名の被験者に対し、肩甲骨運動解析、筋シナジー解析、前鋸筋と僧帽筋下部線維の運動単位解析を実施している。2024年度は今行っていることを継続して行う。
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Causes of Carryover |
当初計画していた旅費は、2023年度に請求しなかった。そのために、次年度使用額が発生した。それは2024年度4月にMatLabの保守料として使用する予定である。
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