2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K10584
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
芝口 翼 金沢大学, GS教育系, 講師 (40785953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野中 雄大 金沢大学, GS教育系, 助教 (30866645)
増田 和実 金沢大学, 学校教育系, 教授 (50323283)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 筋損傷 / 筋再生 / アイシング / 線維化 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、骨格筋損傷後の急性のアイシング処置がもたらす筋再生/代謝機能回復不全の背後に、骨格筋の温度感知を介した筋再生制御機構の存在を想定し、損傷筋線維(筋細胞)に着目しながらその機構の存在及び分子基盤を解明することを目的としている。令和5年度では、まずin vitroにおける筋損傷モデルの確立を目指した。分化させたC2C12筋管細胞の培地に塩酸ブピバカイン(BPVC)を添加し(200~800μM)、24時間後に細胞を回収したところ、800μM条件のみミオグロビン(損傷マーカー)の発現がほぼ消失し、ミオシン重鎖(細胞骨格マーカー)とPDH(ミトコンドリアマーカー)の発現量も減少した。これらマーカータンパク質の挙動はラット骨格筋(足底筋)をBPVCで損傷させた際の24時間後の挙動とほぼ一致していたが、800μM条件では培養プレート上から筋管細胞の剥離が生じていたため、BPVCの添加濃度や暴露時間、損傷方法自体等の改善を図る必要があると考えている。 また、損傷骨格筋へのアイシング処置に対する温度感知標的分子の網羅的探索に用いるin vivo筋損傷モデルの妥当性についても検討を行った。ラットのヒラメ筋(遅筋)と足底筋(速筋)にBPVCを筋注し、一部のラットに20分間のアイシング処置を施した後、損傷6時間後に両筋を摘出し、全画分を抽出した。いずれの骨格筋においても、アイシング処置の有無に関わらず損傷6時間後にMPO(好中球マーカー)の発現量が増加し、ミオグロビンとデスミン・ジストロフィン(細胞骨格マーカー)の発現はほぼ消失、PDHの発現量も減少するという表現型が再現良く得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定としていた安定的に筋管細胞の損傷を惹起するin vitroでのBPVC添加条件を見出しつつあるものの、設定したBPVC添加条件では筋管細胞の剥離が生じ、その改善策の条件検討が難航している。また、それに伴い当初計画していたin vivo実験が遅れ、RNA-seqによる損傷骨格筋へのアイシング処置に対する温度感知標的分子の網羅的探索まで至ることができなかった。したがって、in vivoにおける筋損傷モデルの妥当性は確認できたものの、現在の達成度としてはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は進捗の遅れを取り戻すべく、本年度in vivo検証により採取した損傷6時間後の筋サンプルに対してRNA-seqを行い、アイシング処置によって発現が変動する遺伝子群を網羅的に探索し、骨格筋内の温度感知標的分子の候補を早急に絞り込む。万一候補遺伝子の同定数が少ない場合には、より早期のタイムポイント(損傷1~3時間後)での再検証も想定している。また、in vitro筋損傷モデルの確立も引き続き並行して行い、方法を確立次第、in vivo検証で得られた温度感知標的分子の候補を基に、筋細胞に備わる温度感知標的分子の特定を試みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
in vitro検証が難航し、当初計画していたin vivo検証が遅れたためRNA-seq解析を外部委託できなかったことから、次年度使用額が生じた。次年度使用額は令和6年度においてRNA-seq解析外部委託費を中心とした使用を計画している。
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