2023 Fiscal Year Research-status Report
異なる様式の運動トレーニングによるストレス高感受性動物の適応・不適応
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23K10637
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
井上 恒志郎 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 講師 (30708574)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 運動様式 / 海馬 / BALBマウス / うつ・不安様行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶や情動を司る海馬の機能向上には、ストレスフリーまたはストレス適応が可能な条件での運動トレーニングが有効である。近年我々は、ストレス高感受性(BALB)マウスで、輪回し走運動(WR)はストレス反応を惹起しないが、トレッドミル走運動(TR)は強度に関係なくストレス反応を惹起することを報告した。これは運動に対する一過性のストレス反応の変化であり、長期間のトレーニングを行った際のストレス適応の変化やその結果として起こりうる海馬への影響は不明である。 侵害性のストレスを繰り返し負荷すると、C57マウスのような一般的な実験動物ではストレス適応が起こる。一方、BALBマウスでは不適応が起こり、海馬可塑性の低下やうつ症の出現がみられる。以上を踏まえると、BALBマウスでは、TRトレーニングがストレス不適応とそれに伴う海馬への悪影響を引き起こす一方、ストレスフリーなWRトレーニングは海馬の可塑性や機能を高める可能性がある(仮説)。 今年度は、6週間のTRまたはWRトレーニングがBALBマウスのうつ・不安様行動に与える影響を検討し、上記仮説のうち、運動様式が異なることで海馬機能に対するトレーニング効果が違ってくるか否か検証した。実験の結果、WRトレーニングによるうつ・不安様行動の改善は確認できなかったものの、TRトレーニングによるうつ様行動の増悪(不安様行動は変化なし)が確認された。この結果は、TRトレーニングが海馬機能に悪影響を与える可能性を示唆しており、上記仮説の一部を支持する。すべての実験は所属大学で行われ、実験は順調に進行している。実験の一部は卒業研究の一環として学生と共同して実施され、学内で開催された発表会で報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動テストの内容に若干の変更を加えたものの実験はおおむね順調に進んでおり、実験の結果、全てではなかったが、仮説の一部は支持されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
残された課題は、様式の異なる長期の運動トレーニングがBALBマウスの海馬神経可塑性(神経新生)、ストレス反応に及ぼす影響を明らかにすること、また同じ条件で実験を行った場合にC57マウスでは異なる適応を示すか否かを明らかにすることである。なお、C57マウスでは、BALBマウスと異なり、WRとTRのどちらの条件でも、6週間の運動トレーニング後、ストレス適応が見られ、海馬神経可塑性と機能に好影響が出ると仮説している。 トレーニング期間を6週間に設定していることやその後の解析、1回の実験で可能な匹数などを考慮すると、1回の実験系を完遂するのに約半年要する。まずはBALBマウスでの実験完遂を優先し、次年度は、6週間のTRまたはWRトレーニングがBALBマウスの海馬神経新生およびストレスホルモン(血漿コルチコステロン、CORT)に与える影響を検討する。実験の手技・手法はすでに習得済みであるため、速やかに動物を搬入し、実験を開始する。CORTはRIA測定をおこう予定であり、RIA測定のみ学外(北海道大学)で実施する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、当初の計画と実験手順を入れ替えて、現有する設備備品で実施が可能な行動実験を実施したため、主に消耗品費に当てていた費用の使用額が減少した。また、参加を予定していた学会が研究報告・発表を行わない形式での開催に変更され、参加を見合わせたため、その分の旅費約10万円も未使用となった。さらに、論文投稿にも至らなかったため、その費用として計上して額も未使用となった。 今後、当初の流れに沿った研究計画での遂行に戻し、消耗品費は当初の予定額での執行になると考えている。また国内学会への参加も2-3件予定しており、論文投稿も予定しているため、2年目には予定額での執行になると計画している。
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