2023 Fiscal Year Research-status Report
口腔細菌叢と唾液中のバイオマーカーに対する高気圧酸素療法の有効性
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23K10640
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
上野 俊明 明海大学, 歯学部, 教授 (30292981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田邊 元 明海大学, 歯学部, 助教 (00844341)
雨宮 正樹 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 特任助教 (00848442)
柳下 和慶 東京医科歯科大学, 統合教育機構, 教授 (10359672)
林 海里 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (30803192)
中禮 宏 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 講師 (50431945)
竹内 康雄 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (60396968)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | スポーツ / う蝕 / 歯周病 / 高気圧酸素治療 / アクアポリン / 唾液 / 口腔内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
アスリートは一般人に比べてう蝕(むし歯)や歯周病といった歯科疾患リスクが高いことから、より効果的な治療予防戦略が求められているが、未だ有効法はない。本研究ではスポーツ医学領域で利活用されている高気圧酸素療法(HBO)に着目し、HBOが唾液分泌機能や口内免疫バイオマーカーへどのように影響を及ぼすか、また口腔細菌叢にどのような変化をもたらすかを調査し、さらにその作用機序の解明をめざしている。 当初の申請計画では、2023年度は臨床研究を行う予定だったが、研究班で討議した結果、HBOが口腔内環境に与える影響についての基礎的検討を先行して実施するほうが合理的ということとなり、まず初めに動物実験を行うこととなった。今年度は、その動物実験計画書の申請承認およびHBO専用機材を動物実験センターへ搬入するための申請承認などの諸手続きを行って、ラットを用いた動物実験を開始し、予備的研究データを取得し始めるところまで研究が進捗した。 得られたデータから、HBOを2週継続介入したラット群では、行わなかったラット群と比べて、唾液腺のアクアポリン1(AQP1)の発現量が増加している傾向を認めた。AQP1は唾液分泌時に開口する水チャンネルであるため、AQP1の発現増加は唾液分泌能力の増加に繋がるものと考えられる。次年度以降サンプル数を増やして実験を重ね、他の影響因子(AQP5、HIF-1α、VEGF等)も評価し、HBOによる唾液腺分泌機能の促進効果とその機序を追究したいと考えている。 HBO介入により唾液分泌が促進されれば、口腔内細菌叢にも何かの変化が生じる可能性が高くなる。それは臨床研究を行う上での根拠データとなりうるので、次年度動物実験とともに、臨床研究を行うための準備も始め、出来れば基礎、臨床の両面からのデータを収集分析したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来予定していた研究計画の順序を変更し、本来2年目以降に行う予定だった動物実験を初年度に前倒しして行った。今年度は動物実験の計画書の承認や機材搬入といった各種申請手続きを済ませ、予備実験において、唾液腺において、唾液分泌と関連するタンパク質の一つが増加する傾向を確認することが出来た。このことから次年度以降、さらにサンプル数を増やし、関連因子の解析を進めていくことで、HBOによる唾液分泌の増加を立証できる可能性は高いと考えている。 HBOによる唾液分泌の増加の立証は、口腔内細菌叢にも影響を与える可能性が高いため、この結果は、次年度以降に行う予定の臨床研究を行っていくうえでも貴重な根拠となると考えている。 ここまでの経過は、研究の順序の変更後に改めて想定しなおした進度とおおむね同じであり、トータルで考えても予定通りの進度と言えるため、現在の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず、動物実験に関しては、解析する因子の項目を増やし、解析に必要なサンプル数を確保することで、HBOが唾液分泌機能に影響を与えることを立証したいと考えている。また、そこまでに得られた成果に関しては学会での発表を行い、データが十分に揃うようなら、論文作成にも取り掛かり始めたいと考えている。 また、同時に臨床研究も進めていきたいと考えており、まずは研究倫理審査委員会での研究計画の承認、必要機材や被験者の確保などの、諸手続きを今年度中には完了したいと考えており、可能ならば、実際の研究の実施も始めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は研究計画の順序を入れ替えたことで、臨床実験にかかる人件費や高額なシーケンス解析料金が発生していないため、今年度予算に次年度使用額が生じた。次年度は臨床実験を開始することが出来れば、人件費やシーケンス解析委託料に高額の予算が必要になるため、そこに次年度使用額を利用したいと考えている。 また動物実験もまだ予備実験段階で、抗体などの高額な試薬の使用もまだ少なかったが、次年度は試薬の消費量が増えることが考えられるので、そちらにも予算を分配したいと考えている。 さらに次年度は学会での研究発表も考えているので、発表者の参加費・旅費にも予算を利用したいと考えている。
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