2023 Fiscal Year Research-status Report
神経発達障害者の包摂的なスポーツ活動環境の構築に向けた探索的検討
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23K10670
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大嶽 真人 日本大学, 文理学部, 教授 (90338236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋口 泰一 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (90434068)
伊佐野 龍司 日本大学, 文理学部, 准教授 (00734112)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | パラアスリート / 神経発達障害者 / スポーツ環境 / 半構造化インタビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
パラ(障害者)アスリートがトレーニングを行う際には,障害特性に応じた人・場所・モノが必要とされるため,現在手がけられている省庁からの医科学サポートや専門的な施設の利用支援が限定的に取り扱われており,神経発達障害者スポーツが十分な支援を受けていないことが課題とされていた.その上で,本研究は,神経発達障害の競技場面に焦点を当て,誰もが自らの意思で実施可能な安心で安全なトレーニング環境と方策を目指している.今年度は,指導現場の総括的な役割を担う神経発達障害の競技団体の代表指導者2名(A氏・B氏)に対して質的調査を実施した。トレーニング環境を支える指導者の理念等を基幹的質問として定め,半構造化インタビューを実施した。その結果,対象者A氏は,若年層から高齢まで幅広い年代に指導を展開している背景があるため,スポーツを実施する際には人的なサポートが欠かせないが,特に若年層においては保護者による介入から一定程度距離を置いて取り組むことが安心な場所を拡張する上での重要な要素であり,ひいては安全につながることが語られた。また,支援についても複数の担当者が連携して行うことが,関係性を適切に構築する上で重要であることが語られた。これらは,スポーツ環境をマネジメントしていくための人的資源を構築する上で重要な示唆となる。一方,競技力の強化にも精通し,日本を代表する指導者であるB氏においては,自身以外のコーチがプレイヤーの言葉を引き出し,スタッフ間のコミュニケーションを促進する役割を果たしていることが開示された。その目的は,選手自身が持つ背景を理解し,安心して競技に臨める環境を作ることであり,障害の有無に関わらず,個々の立場や専門性を尊重し,意思疎通を重んじる理念に基づいていた。次年度は,これまでのインタビューデータについて詳細に分析を行うとともに,研究発表を通して社会に認知していく必要があろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに,トレーニング環境を支える指導者の理念等を抽出するための基幹的質問の項目を先行研究の概観を通じて作成した。また,これらの質問を用いて,自らスポーツクラブを立ち上げ, 神経発達障害を有する若年層から高齢まで幅広い年代に指導を実施する指導者に対して半構造インタビューを実施した。さらに,競技力の強化に競技力の強化にも精通し,日本を代表する指導者にも同様の調査を実施した。国内学会において,成果を発表することができた。調査対象者の拡大や考察視座の提供など,学会において国内研究者との情報交換や貴重な協議を行うことができた。一方,研究成果を国際パラリンピック委員会(IPC)主催のVISTA2024conferenceにて発表を予定していたが,投稿受理されたものの国際情勢不安(イスラエル・ガザ侵攻)に伴い,学会大会の開催が延期となり発表することができなかった。海外における学会発表の際に,欧州の研究者に対して現状をヒアリングすることも検討していたが,実施することができなかった。しかしながら,すでに欧州における取り組みについてヒアリング可能な調査者とのコンタクトに成功しているため,次年度に同調査を実施することが決定している。また,トレーニング環境については「測定項目の検証と予備的調査の検討」として,クラブと連携し,申請者らが所属する大学施設内において活動・調査を複数回実施した。なお,本研究はトレーニング環境を支える支援者にも着目しており,当該トレーニングを支える参加者にもインタビュー調査を実施した。この調査は国外学会に投稿受理され,2024年度に発表することが決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,本研究が調査対象としていた神経発達障害者のスポーツクラブの指導者,日本を代表する指導者に対して,基幹的質問事項を作成し,インタビューを実施することができた。また,トレーニング環境については「測定項目の検証と予備的調査の検討」として,クラブと連携し,申請者らが所属する大学施設内において活動・調査を複数回実施し,トレーニング環境を支える支援者にもインタビューを実施することができた。 令和6年度は,国内パラスポーツのトレーニング環境について対象者を拡張しながら継続調査を行う。また,令和5年度に調査した内容の国内外の学会において発表を行う。なお,トレーニング環境を支える指導者と支援者に関するインタビュー調査の結果は,EUCAPA2024 conferenceに投稿し,採択されている。発表後の議論を通じて考察内容を精査し,関連学会での論文投稿を目指す。また,欧州諸国を対象としスポーツ活動環境に関する実施調査を行う。すでに,欧州における取り組みについてヒアリング可能な調査者に対してヒアリングを実施すると共に,現地調査を行う予定である。 また,トレーニング環境については,令和5年度に実施した活動・調査に合わせて,チーム活動拠点に対するトレーニングの設備を整える。また,認知系や機器を用いたトレーニングの実施とその効果について測定及び評価を行う。しかしながら,トレーニングは運動の目的や対象者の特性などの多様な要因によって決定されるため,指導者や支援者と入念な協議を実施した上で決定し,実施する。
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Causes of Carryover |
令和5年度は,国内学会とエジプト・カイロで開催される予定であった国際パラリンピック委員会主催のVISTA2024Conferenceにて発表を予定していた。しかし,投稿受理はされたものの国際情勢不安(イスラエル・ガザ侵攻)にて開催が延期され,発表できなかった。この延期に伴う航空費や宿泊費等のキャンセル料が大きな出費となった。このように世界的な情勢の変化や物価・燃料費の高騰により,当初の計画より修正せざるを得ない状況が続いた。 令和6年度は,令和5年度に続き,国内の神経発達障害者のスポーツに関わる指導者及び支援者の調査を実施し,知見を蓄積していく。また,同内容について研究発表を行い,研究者間での情報交換を充実させる。この調査と発表に伴う移動費及び人件費等について計上している。また,国外における調査及び学会発表が計画されているが、昨年度同様に国際情勢に伴う渡航費及び宿泊費の高騰など不透明な部分が多い。そのため,その方面に精通した国外研究者や関係者との連携を図り,効率的かつ効果的に研究を遂行していく。
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Research Products
(12 results)