2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K10837
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
五十嵐 潤子 (右高潤子) 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (40398962)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | メラトニン受容体 / 骨髄 / マウス / 大腿骨 / 免疫染色 |
Outline of Annual Research Achievements |
メラトニンは主に松果体で産生され、概日リズムの同調効果や強力な抗酸化作用が知られるホルモンである。一方、メラトニンは網膜や脳、卵巣など様々な器官で産生され、各器官で局所的な作用を持つことや、記憶や学習効果にも関与する事が報告され、非常に幅広い作用をもつホルモンである事が解明されてきた。このような状況において、我々は、加齢マウスの骨組織におけるメラトニンの機能を調べ、骨髄の造血細胞にメラトニン受容体MT2が発現している事を見出した。骨髄は全血球細胞を産生する場として生体の生命維持に重要な臓器である。骨髄の造血細胞の分化に、骨を構成する細胞の骨芽細胞が密接に関連していることが盛んに研究されている現在、造血細胞におけるメラトニンの作用を調べる事は、骨粗鬆症や骨疾患、血液癌の治療や予防のための根拠を提供する基盤的研究となる。本研究は、骨髄の造血細胞におけるメラトニンの機能を調べ、メラトニンが造血細胞の分化や維持に機能する可能性を検証することを目的とする。その為に初年度は、マウスを用いて、どの造血細胞がMT2陽性であるか組織学的に解析する。具体的には、メラトニンを産生しない成熟オスBALB/cマウス、およびメラトニンを産生する成熟オスC3H/Heマウスから大腿骨を採取して骨髄の組織標本を作製し、MT2及び各造血細胞のマーカーとなる物質に対する抗体を用いた免疫染色により解析する。この結果をもとに、次年度はMT2陽性細胞がメラトニンによりどのような影響を受けるかフローサイトメトリーを用いて解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
骨髄の造血細胞におけるメラトニンの作用を調べる為に、本年度は組織学的な検討として、BALB/c C3H/Heの両系統のマウスを用いて、大腿骨の骨髄の免疫染色を行った。骨髄の造血細胞には、将来、赤芽球、白血球(果粒球・無果粒球)、血小板となる細胞がそれぞれあり、様々な分化・成熟の段階で存在している。細胞の種類や分化・成熟段階によりその形態は変化し、マーカーとなる物質も変化する。そこで、本年度はまず塗抹標本や組織切片など、解析に適した標本の作製方法を検討した。そして次にMT2抗体、および免疫染色に使用可能な造血細胞のマーカー抗体を各種用いて、MT2がどの細胞に発現しているか調べた。しかしながら造血細胞の免疫染色に用いる抗体の選択に時間を要し、また、MT2および造血細胞のマーカーの陽性度が共に弱~強陽性まで多段階あることから解析が滞っている。おおよその傾向を掴む事は出来ているものの、予定していた染色の幾つかは年度内に完了出来なかった為、やや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず初年度に解析しきれなかった免疫染色を進める。次に、骨髄の造血細胞におけるメラトニンの機能解析として、細胞の分化や維持に機能する可能性について検討する。その為に、BALB/cマウスを用いて、メラトニン投与群と、投与しない群の骨髄の細胞構成や各細胞の分布量等をフローサイトメトリーで比較し、メラトニンの機能を推察する。また、骨髄の塗抹標本・組織標本を作製し、造血細胞の分化への影響を組織学的に調べる。
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Causes of Carryover |
免疫染色の解析が遅れている為次年度使用額が生じた。この費用は、遅れている免疫染色を進めるため、抗体等試薬の購入に使用する。また次年度のフローサイトメトリーで用いる試薬の購入にも充てる。
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