2023 Fiscal Year Research-status Report
代謝異常と脳機能の関連性およびそれら改善に寄与する食環境に関する研究
Project/Area Number |
23K10847
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
井上 奈穂 佐賀大学, 農学部, 准教授 (90510529)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | メタボローム / ステップスルーテスト / 老化モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は生活習慣病やメタボリックシンドロームなどの「代謝異常」と学習や記憶、認知などの「脳機能」の関連性について検証し、さらにそれらを食品由来機能性成分を活用した「食環境」によって改善することを目的としている。 2023年度は健常モデルおよび疾患モデルを用いたin vivo系で代謝異常と脳機能の関係についての基礎データの収集を行う。まず、生体サンプルを用いた一次代謝物および脂質メディエーターのメタボローム解析(LC-MS分析系)の確立に着手した。脂質メディエーター分析の際の内部標準の添加方法に若干の改良が必要ではあるものの、一次代謝物も脂質メディエーターも概ね問題なく分析できるようになった。つづいて、11週齢オスの健常モデルSAMR1マウスおよび老化モデルSAMP8マウスを2週間馴化させ、ステップスルーテスト(3日間連続で実施、1日目は学習習得試験、2日目と3日目は記憶保持試験)を実施した。各モデルともにステップスルーテストの結果と平均体重を考慮して、通常群としてのNormal Fat食群(10%kcal fat含有食群)と代謝異常誘発群としてのHigh fat食群(60%kcal fat含有食群)の2群に群分けした。数日ごとに体重、摂食量(摂取カロリー量)を記録し、4週間ごとにステップスルーテスト(3日間)を実施して代謝異常と脳機能の関係について経時的に観察を続けている。現時点で、健常モデルは4週目、8週目いずれも食餌の違いによる学習能や記憶力への影響は認められないが、老化モデルでは4週目、8週目いずれもNormal fat食群に比べてHigh fat食群は学習能、記憶力ともに低下傾向にあることが認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ステップスルーテストでは、現時点で、健常モデルは4週目、8週目いずれも食餌の違いによる学習能や記憶力への影響は認められず、老化モデルでは4週目、8週目いずれもNormal fat食群に比べてHigh fat食群は学習能、記憶力ともに低下傾向にあるという結果が得られている。この結果は、本研究の着想に至った背景でもある「代謝異常や肥満のある人、あるいはその両方のある人では、もっとも健康的な参加者に比べて、脳機能が低下している」といった身体的な健康が脳の健康にも影響を及ぼすという疫学研究と類似した結果であり、実験系としてきちんと構築できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
動物実験は飼育期間を5ヶ月程度(馴化期間含む)と設定し、4週間ごとにステップスルーテストを実施しているため、本研究での生体サンプルはまだ得られていないが、過去の生体サンプル(肝臓・脳)を利用して、一次代謝物および脂質メディエーターのLC-MS分析系はすでに確立しており、動物実験の終了後には速やかに分析を実施予定である。 また、他の健常モデルや疾患モデルを用いて、ステップスルーテストを開始し、代謝疾患の違いと脳機能の関係についても検証する予定である。
|
Causes of Carryover |
【理由】 初年度の動物実験の飼育期間を長めに設定し、経時的な変化をしっかりと追う計画に変更したことにより、使用する動物の数が減ったため。 【使用計画】 次年度にも動物実験を追加する。
|