2023 Fiscal Year Research-status Report
Application to novel cancer therapy via DNA methylation by soy isoflavones
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23K10850
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
首藤 恵泉 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (10512121)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | イソフラボン / 癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国における死因の第一は男女ともに癌である。癌治療において、侵襲の大きい外科的手術や抗癌剤による副作用など、心身共に著しくQOLを損なうことが課題である。癌の治療を行っても治療抵抗性を示し、臨床画像で指摘できないレベルで残存する癌細胞が存在し、自己複製能および多分化能といった特徴を併せ持ち腫瘍形成能を有することから、癌幹細胞(Cancer Stem Cell:CSC)として着目されている。癌再発の根源として考えられていることからCSCに着目することは重要である。大豆イソフラボンの中でもゲニステインは、幅広い抗癌作用について細胞および動物実験で多数報告されているが、CSCへの作用は明らかとなっていないことから、本研究ではゲニステインによるCSCの効果とそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。 確立されているCSCの幹細胞性(ステムネス)検定システムにより、ゲニステインがCSCを細胞死へ誘導する一方で分化・増殖も抑制する可能性を見出した。そこで、これらのスフェロイドを回収して幹細胞マーカー遺伝子の発現について解析したところ、癌遺伝子であるsnailおよび転移に必要とされるE-cadherinにおいて、ゲニステイン添加により有意な減少が認められることを確認した。ゲニステインが複数のメカニズムを介してCSCに対して抑制的に作用する可能性が示唆されたが、ゲニステインが作用するシグナル伝達経路は複雑であることが推測されることから、これらの詳細な作用メカニズムの検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属機関の変更に伴い、これまで用いていた癌幹細胞の幹細胞性(ステムネス)検定システムである3次元培養スフェロイド法やtumorsphere assay法の再現性を確認する必要があったが、概ね問題なく安定した結果を得ることを確認できた。さらに、ステムネス検定を用いて、ゲニステイン添加によりCSCを死滅させるとともにCSCが形成するスフェロイド形成能を抑制させることを確認した。そこで、このメカニズムを明らかにするために、癌幹細胞の誘導や維持に必要とされる情報伝達経路関連因子、癌幹細胞を誘導する上皮間葉転換(EMT)関連転写因子、幹細胞関連転写因子などについて検討できており、研究計画を遂行できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)抗癌剤および他剤との併用における大豆イソフラボンの効果の解析 多彩な原因が錯綜する癌治療においては、腫瘍内の癌幹細胞以外の癌細胞に優先的に作用する抗癌剤や、癌幹細胞を狙った薬剤等、作用機序や標的の異なる薬剤を併用することにより相乗効果を狙うことができる。癌幹細胞抑制効果を発揮する大豆イソフラボンと、抗癌剤や作用機序の異なる代謝拮抗薬との併用による相乗効果について、従来から用いられている tumorsphere assay 法に加えて、共同研究先で確立されている癌幹細胞のステムネス検定システムを使用し解析する。 (2)大豆イソフラボンによる癌細胞のDNAメチル化と免疫療法への効果の解析 大豆イソフラボンが、DNAのメチル化を制御するDNAメチル化酵素であるDNMTの発現を抑制し、LINE-1やHERVなどのrepeated sequenceの発現が癌細胞特異的に起こること、そして自然免疫が活性化することをin vitroにおいて検証・解析する。H3K9メチル化阻害剤(カエトシン)をポジティブコントロールとする。さらに、大豆イソフラボンと免疫チェックポイント阻害剤を併用した効果について、in vitro において得られた結果をもとに、乳癌細胞を移植した腫瘍モデルマウスを用いて検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は、学内の共通機器を有効活用することにより、計画していたin vitroによる癌幹細胞の評価を予算内で行うことができた。 次年度以降は、癌モデルマウスを用いて大豆イソフラボン投与による腫瘍巣に対する効果(腫瘍サイズ、組織像)を検討する。また、これらのマウスにおける癌免疫、癌代謝の変化を評価することにより、大豆イソフラボンの癌幹細胞への作用機序、癌代謝及び癌免疫への作用を検証し、他の抗癌剤との併用をin vivoを含めて検討することを通じて、副作用が少ない食品機能成分による癌治療への新しい可能性を検証することに使用する。
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