2023 Fiscal Year Research-status Report
複製老化過程に潜在するミトコンドリア代謝変容の同定と細胞老化メカニズムの解明
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23K10864
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
藤田 泰典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30515888)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 代謝 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
老化は加齢に伴う生理機能の低下であり、加齢性疾患の最大のリスクファクターである。老化の分子機序を解明することは、加齢性疾患の予防・治療法の開発に繋がり、健康寿命の延伸に寄与する。老化のより根元的な機序に迫るには、細胞が老化する分子機序を究明することが重要である。細胞老化は細胞が不可逆的に細胞分裂を停止する現象である。複製老化は細胞老化の一種であり、細胞が分裂限界まで分裂を繰り返すことで引き起こされる。複製老化は培養細胞で観察される現象であるが、複製老化の特徴を示す細胞が老齢個体で検出される。細胞が細胞分裂停止に至るまでの分子機序とミトコンドリア機能障害との関係については、未だ統一した理解は得られていない。そこで本研究では、老化機構の根本的な理解を目指し、複製老化過程に潜在するミトコンドリア代謝変容を見出し、細胞が老化する分子機序を明らかにすることを目的とした。 ヒト胎児線維芽細胞TIG-1のメタボローム解析を行い、複製老化過程で量的変化を示す代謝物質を同定した。また安定同位体標識グルコースを用いた代謝フラックス解析を行い、複製老化過程で代謝流量が変化する代謝経路を明らかにした。さらに、TIG-1細胞およびTIG-1細胞から単離したミトコンドリアのプロテオーム解析を行い、複製老化の進行に伴い増減するタンパク質を複数同定した。その発現誘導に関与する転写因子を同定した。次年度は、これら代謝経路と転写因子に焦点を当てて解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1) 複製老化過程に潜在するミトコンドリア代謝変容の同定、(2) ミトコンドリア代謝変容の分子機序の解析、(3) ミトコンドリア代謝変容と複製老化メカニズムの関連性の検証、(4) 老化過程のマウス臓器におけるミトコンドリア代謝変容の検出、(5) 生体内で起こる細胞老化とミトコンドリア代謝変容の関連性の検証の5つの項目を設定し、研究を進めている。 当該年度は、(1)と(2)の研究項目に取り組んだ。(1)では、ヒト胎児線維芽細胞TIG-1のメタボローム解析を行い、複製老化過程で量的変化を示す代謝物質を同定した。また安定同位体標識グルコースを用いた代謝フラックス解析を行い、複製老化過程で代謝流量が変化する代謝経路を明らかにした。(2)TIG-1細胞およびTIG-1細胞から単離したミトコンドリアのプロテオーム解析を行い、複製老化の進行に伴い増減するタンパク質を複数同定した。その発現誘導に関与する転写因子を同定した。このように概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)と(2)で同定した代謝物質・経路とミトコンドリアタンパク質・転写因子との関連性を解析し、分子機序の詳細を明らかにする。また、代謝変化に関連する分子の過剰発現、遺伝子ノックダウン、薬剤による発現・活性制御を行い、複製老化への影響を解析する。また、他の細胞老化モデルでの検証も行う。その後、ヒト胎児線維芽細胞で同定したミトコンドリア代謝変容が、老化過程にある個体にも潜在しているかを老齢マウスで検証する。最終的には、ミトコンドリア代謝変容に関わる経路の阻害剤または活性化剤を入手し、老化に対する効果を確認した後、中齢期のマウスに同薬剤を投与し、臓器における代謝変容と細胞老化を評価する。
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Causes of Carryover |
購入予定の試薬が今年度中に入手できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度、当該試薬を購入し実験に使用する。
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