2023 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリックスに着目したNASH病態進展機序の解明
Project/Area Number |
23K10865
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
舟橋 伸昭 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (30727491)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞外マトリックス / Laminin-γ2 / NASH / 肝がん / 発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
肝がんは、本邦の悪性腫瘍の死因の第5位を占めており、その新規の診断法や治療法の開発は喫緊の課題である。これまでに当研究室では、血清Laminin-γ2単鎖(Lm-γ2m)が肝がんの診断、発がん予測、遠隔転移のバイオマーカーになることを見出した。このように、Lm-γ2mは肝発がん及び悪性化進展への寄与が示唆されたので、分子機序の解明ためにin vivo、in vitro解析を行った。その結果、肝発がん時に、CK19陽性の肝前駆細胞由来のLm-γ2mがパラクライン増殖因子として、周りの肝細胞に影響を及ぼし、発がんおよび悪性化進展に関与することを示した。以上のように、Lm-γ2mが肝発がん時以降に関連することが明らかとなったが、どれくらい前の段階から肝臓に影響を及ぼすのか明らかでない。 今回、我々は上記の目的を明らかにするために、マウスのLm-γ2遺伝子座をヒトLm-γ2遺伝子に置き換えたヒト型Lm-γ2 Knock-inマウスを用いて、超高脂肪コリン欠乏メチオニン減量食(CDAA)食餌誘発によるNASHモデルマウスを作製しようと考えた。まず、予備的検討として、CDAA食餌誘発を4、10週間行い、マウス肝臓の状態を確認した。その結果、CDAA食餌誘発により、脂肪蓄積および線維化が進行していることが明らかとなった。さらに、それらマウスから血液を採取し、血清中のLm-γ2m量を測定した。その結果、CDAA食餌誘発10Wでは血清Lm-γ2m量が増加していることが明らかとなった。また、血清AST、ALTを測定し、CDAA食餌誘発4、10WでAST量が増加していることが示された。これらの結果より、NASH病態が進行するとともに、血清Lm-γ2m量が増加することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度には、in vivo解析ではヒト型Lm-γ2 Knock-inマウスを用いたNASHモデルの作製、in vitro解析では、Lm-γ2安定発現肝細胞株、胆管上皮細胞株のシグナル伝達経路および機能解析を計画していた。In vivo解析では、NASHモデルマウスを予定通り作製した。さらに、予備的検討ではあるが、NASHモデルマウスのNASH病態が進行するとともに、血清Lm-γ2m量が増加することを示すことができた。また、in vitro解析では、肝細胞においてLm-γ2単鎖は、形質転換能、細胞増殖能、遊走、浸潤能を有意に増加させ、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるGefitinibにより、増加した遊走能がキャンセルされた。従って、Lm-γ2単鎖はEGFRを介して、形質転換能、細胞増殖能、遊走、浸潤能を増加させることが示唆された。 以上のように当初の研究計画どおりに進み、研究成果も出ているため、今回の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究計画どおり推進する予定である。具体的には以下のとおりである。 ①ヒト型Lm-γ2 Knock-inマウスのNASHモデルの解析を行う。まず、CDAA食餌誘導、0、2、4、6、8、10週間行う。それらのマウスの肝切片を用いて、Lm-γ2や肝前駆細胞マーカーのCK19などで免疫組織染色を行う。さらに血清中のLm-γ2単鎖量やAST、ALT、トリグリセリド量の測定を行い、Lm-γ2単鎖とNASH病態との関連性を総合的に判断する。 ②Lm-γ2mとNASH病態との関連性をin vitroで評価するために、Lm-γ2安定発現肝細胞株を用いて、パルミチン酸処理を行い、in vitroのNASHモデルを作製する。その細胞株を用いて、NASH病態と関連性が高いDe novo lipogenesis経路などをタンパク質レベル、mRNAレベルで解析する。さらに、NASHモデル細胞株を用いて、トリグリセリド量やCol1A1やαSMAなどの線維化関連遺伝子を解析し、Lm-γ2mとNASH病態との関連性を検討する。
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Causes of Carryover |
初年度に計画した実験が概ね順調に進み、また効率的に試薬、器具を使用したため、多くの次年度使用額が生じた。今後は、繰越金を有効に活用して培地、試薬など日常的に必要な消耗品を適宜補充して研究計画を遂行する。
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