2023 Fiscal Year Research-status Report
スフィンゴシン1-リン酸が制御するリソソームを介した熱産生機構の解明とその応用
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23K10866
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
盛重 純一 金沢大学, 医学系, 助教 (50423405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 和晃 金沢大学, 医学系, 准教授 (80333368)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | スフィンゴシンキナーゼ / 褐色脂肪細胞 / リソソーム / 細胞外小胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究でマウスを寒冷下で飼育すると褐色脂肪組織で主要なスフィンゴ脂質代謝酵素の1つであるスフィンゴシンキナーゼ1(SphK1) が増加すること,褐色脂肪細胞ではSphK1がリソソームマーカーと共局在し,SphK1を欠損させるとリソソーム数が減少することを明らかとしていた.本年度の研究でリソソーム数とSphK1との関連性について検討したところ,SphK1を欠損させた褐色脂肪細胞に野生型のSphK1をトランスフェクトすると減少したリソソーム数が回復した.一方,酵素活性を持たないSphK1をトランスフェクトした場合ではリソソーム数は回復せず,SphK1よるスフィンゴシンの代謝がリソソーム生合成に重要であることが明らかとなった.また,SphK1欠損マウスでは低温下での体温が野生型マウスよりも低くなることを認めていたが,褐色脂肪細胞での熱産生が行われるミトコンドリアの数や呼吸鎖複合体の発現レベルにはSphK1欠損の影響はなかったものの,リソソームによる細胞内分解機構の1つであるオートファジーには変調が生じていた.さらにSphK1欠損マウスの褐色脂肪細胞では熱産生の燃料であるトリグリセリドが野生型マウスよりも高値を示した.これらの結果から,SphK1欠損により観察された熱産生の低下は,リソソーム数の減少を起因として熱産生の燃料供給過程に問題が生じていることが原因と考えられた.さらに,マウスの褐色脂肪組織由来の細胞外小胞について調べたところ,放出量に関してはSphK1の関与は認められなかった.現在,別のSphKサブタイプであるSphK2の関与についても解析を進めているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の研究計画の中で重要な位置を占める褐色脂肪組織特異的なSphK1とSphK2の二重欠損(BA-DKO)マウスは予定通り作製できたものの,実際に褐色脂肪組織でSphK1とSphK2を欠損していることの証明に時間がかかっており,BA-DKOマウスを使用する研究ができておらず他の研究計画を先に実施している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はBA-DKOマウスの確立を最優先で進める.その一方で,培養細胞レベルでのSphK1/SphK2の二重欠損褐色脂肪細胞 (DKO-BA) の作製も並行して開始する.DKO-BAが作製できれば,SphK1/SphK2の二重欠損がリソソーム生合成におよぼす影響から解析を始める.また,細胞外小胞について,まずSphK1とSphK2,それぞれの単独欠損マウスの細胞外小胞の定量と定性の解析を進める.BA-DKOマウスは確立でき次第,体温測定とリソソーム,細胞外小胞の定量と定性の解析に入る.
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Causes of Carryover |
次年度は未実施の研究計画の実験を進める予定である.具体的な実験計画としては,SphK1およびSphK2とエクソソーム生合成および分泌との関連性やその作用を調べるための細胞外小胞の定量や定性を予定しており,抗体や試薬,細胞培養に関連する培地や血清,細胞外小胞の定量キットおよび消耗品の購入費用が必要となる.また,実験動物も引き続き使用するために飼育費用も必要である.
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