2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the relationship between life span and carnitine biosynthetic capacity in metallothionein knockout mice.
Project/Area Number |
23K10907
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
門田 佳人 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (60461365)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | メタロチオネイン / カルニチン / 老化 / 寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究代表者は、メタロチオネイン遺伝子欠損(MTKO)マウスが、野生型マウスと比較して寿命が短縮すること、またMTKOマウスにおいて、 L-カルニチンの血漿中レベルが高齢期で低く、その合成酵素の1つの発現が低いことを見出している。本研究では、MTKOマウスの寿命短縮とL-カルニチン合成能の関係について、以下2つの目的を設定して研究を行った:目的①「MTKOマウスの寿命短縮は、カルニチンの補充によって改善されるのか」、目的②「L-カルニチン合成能低下は、MT遺伝子欠損によってどのように制御されているのか」。目的①について、40週齢から雌雄の野生型マウスおよびMTKOマウスに対して通常飼料およびカルニチン強化飼料を寿命まで摂取させることとした。また経時的に体重および摂食量、筋力を測定している。現在のところ、両系統とも死亡に至ったマウスはなく、外見上や筋力の違いも見られていない。壮齢期のマウスを随時追加しながら、寿命等の計測していく予定である。目的②について、先行研究において、カルニチンの生合成に関わる酵素トリメチルリジンヒドラーゼ-ε(TMLHE)のmRNAについて、野生型マウスと比較してMTKOマウスにおいて発現が低く、また異常スプライシングを起こしている可能性を見出している。そこで、TMLHE 遺伝子座のシークエンス解析を行った結果、イントロン2のスプライスドナーのGがAに置換していた。このスプライス部位の変異により通常とは異なる位置でスプライシングをした異常なmRNAが合成され、フレームシフトによりナンセンス変異したmRNAやナンセンス変異依存選択的スプライシングによる異常なmRNAの転写などが確認された。したがって、MTKOマウスで認められた高齢期の血漿カルニチンの低下は、TMLHE遺伝子の変異の結果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、メタロチオネイン遺伝子欠損(MTKO)マウスの寿命短縮とL-カルニチン合成能低下の関係について解明することを目的とした。MTKOマウスの寿命短縮に対してカルニチン補充は効果があるかを検討するため、通常飼料にL-カルニチンを配合したカルニチン強化飼料(1 g/kg)の調製を依頼した。カルニチン強化食の摂取開始時期は40週齢からとし、雌雄の野生型マウスおよびMTKOマウスに対して通常飼料およびカルニチン強化飼料を寿命まで摂取させることとした。現在のところ、死亡に至ったマウスはなく、外見的な違いも見られていない。カルニチン強化食を摂食したマウスは、野生型とMTKOマウス問わず最初の1週間に体重増加および摂食量の増加を認めた。四肢握力測定とワイヤーハングテストによる筋力評価について、現在のところ、マウスおよびカルニチン摂取の有無による筋力の違いは検出されていない。 先行研究において、カルニチンの生合成に関わる酵素トリメチルリジンヒドラーゼ-ε(TMLHE)のmRNAについて、野生型マウスと比較してMTKOマウスにおいて発現が低く、また異常スプライシングを起こしている可能性を見出している。そこで、TMLHE 遺伝子座のシークエンス解析を行った結果、イントロン2のスプライスドナーのGがAに置換していた。このスプライス部位の変異により通常とは異なる位置でスプライシングをした異常なmRNAが合成され、フレームシフトを起こして早期の終止コドンが形成されたmRNAやナンセンス変異依存選択的スプライシングによりインフレーム変異したmRNAなどが転写されていることが確認された。したがって、MTKOマウスにおけるTMLHEの低発現は、TMLHE遺伝子座上の一塩基置換によるスプライス変異とそれに伴うナンセンス変異よる正常TMLHEタンパク質合成不全の結果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
L-カルニチン補充によるMTKOマウスの寿命短縮に対する効果について、引き続き雌雄の野生型マウスおよびMTKOマウスに対して通常飼料およびカルニチン強化飼料を寿命まで摂取させる。先行研究で最も若齢で死亡したマウス(45週齢)よりも前の時期からL-カルニチンを摂食させるため、40週齢を迎えたマウスを随時追加していく。死亡したマウスの週齢を記録し、マウスの寿命をカプランマイヤー法による生存曲線を作成して算出し、ログランク検定で有意差を検定する。その結果から、MTKOマウスの寿命短縮に対してカルニチン摂取は改善効果があるのか、また野生型マウスに対してL-カルニチンは延命効果があるのかについて評価する予定である。老齢MTKOマウスは、背骨が曲がり、毛並みにハリがないなどの異常な老化所見が認められたことから、外見的所見についても記録する。体重や摂食量も引き続き記録し、特にMTKOマウスの寿命間際に認められた急激な体重減少がカルニチン摂取によって抑制されるかについて検討する。四肢握力とワイヤーハングテストによってマウスの筋力を定期的に測定し、老化による筋力低下とカルニチン摂取による筋力低下予防効果を評価できるかについて検討する。 今回発見したTMLHE遺伝子の変異について、血中L-カルニチンは老化によって減少するものの野生型マウスの1/2程度であった。一方、TMLHEノックアウトマウスでは、血中L-カルニチンレベルがほとんど検出されないことが報告されているため、当該変異TMLHEがどのようなタンパク質なのかを特定したい。またカルニチン合成能が寿命に与える影響について、TMLHEを含むカルニチン合成経路酵素について老化により発現が変動するかについて解析する。さらに老化によって誘導されるような刺激(酸化ストレスなど)が、それら発現を抑制するかについて、培養細胞株などを用いて検討する。
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Causes of Carryover |
カルニチン強化飼料は、カルニチンの購入費および飼料の委託調製を合わせると、グラム当たりの費用が通常飼料の10倍以上と高額であった。その必要量を通常飼料の年間使用量をベースに試算して調製を依頼する予定であったが、実際の使用量がその試算量を下回っていたため、予算の余剰が発生した。これについて、カルニチン強化飼料は出生したマウスが40週齢に至った時から用いることとしたが、自家繁殖しているマウスの1回の出産数など、年間を通してバラツキがあったため、マウスの数の確保が予想を下回った。次年度は、前年度から飼育しているマウスと随時追加していくマウスがいることから、寿命により死亡するマウスがあったとしてもカルニチン強化飼料と通常飼料いずれも多く消費するため、前年度の余剰した予算を合わせて使用する予定である。
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