2023 Fiscal Year Research-status Report
老化による副腎皮質組織のグルココルチコイド分泌撹乱とゲノム不安定性との連関性
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23K10926
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
奥平 准之 帝京大学, 医学部, 助教 (10635585)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 副腎 / SF1 |
Outline of Annual Research Achievements |
老化は、免疫系や内分泌系の代謝過程の相互作用によって進行する。糖質コルチコイド(Glucocorticoid: GC)は、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸から負のフィードバックを介して制御されるステロイドホルモンであり、代謝や免疫応答の制御に重要な役割を果たす。しかし、加齢に伴うGCの分泌機構の変化については、未だ解明されていない。今回、我々は、マウスのコルチコステロン(CORT)分泌量が、若齢マウスでは日内変動するのに対し、高齢マウスでは一日中過剰分泌され、日内変動が消失することを見出した。CORT過剰分泌のメカニズムを解析するため、副腎のGC分泌を担うzona fasciculata(zF)を分離して遺伝子発現解析と免疫組織化学解析を行った。若齢マウスと高齢マウスの副腎HE染色を比較すると、zF領域の細胞質が肥大し変性細胞が見られた。また、StAR や CYP11B1 などの GC 関連酵素を標的とする重要な転写因子である Ad4BP/SF1(SF1) の発現が、6 ヶ月齢のマウスに比べて 24 ヶ月齢のマウスでは 2 倍以上増加した。免疫組織化学的解析により、加齢に伴い副腎のzFに老化細胞が徐々に蓄積し、SF1が老化細胞に特異的に強く発現していることが明らかになった。次に、Senolyticsとして知られるDasatinib(D)とQuercetin(Q)を高齢マウスに投与した。その結果、D+Q投与群では、高齢マウスのCORT濃度が若齢マウスレベルに改善し、p16とSF1の発現はほぼ抑制され、StAR及びCYP11A1は半分程度に抑制された。つまり、zFの老化細胞の蓄積がCORTの分泌過剰を引き起こすことが明らかになった。現在、副腎の老化と炎症性シグナルに着目して研究を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス実験によるデータ解析も順調に進み、現在、論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症性シグナルに着目して、副腎と老化の制御因子の探索を行っている。また、老化細胞を蛍光標識できるマウスを獲得し、シングルセルRNAーseq解析を予定している。
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Causes of Carryover |
研究計画は順調だが、動物実験消耗品使用量が当初の予定より少なかったので、次年度に使用することとした。
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