2023 Fiscal Year Research-status Report
ヒト汗腺モデルを利用した汗腺老化メカニズムの解明と有効成分の探査
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23K10936
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
早川 智久 公益財団法人がん研究会, NEXT-Gankenプログラム がん細胞社会成因解明プロジェクト, 研究員 (60773132)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 老化 / 汗腺 / 細胞老化 / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
1.汗腺細胞の増殖能力の加齢に伴う変化。老齢(60<)の皮膚より単離した汗腺細胞と若齢(40>)皮膚より単離した汗腺細胞における細胞増殖能力を比較した。老化皮膚由来の汗腺細胞の増殖能力は若齢組織由来の汗腺細胞より増殖能力が低くかった。従って、汗腺細胞は加齢により組織を維持する機能が低下している可能性が明らかになった。加齢に伴う汗腺の萎縮は汗腺細胞の増殖能の低下による組織型性能の低下に起因する可能性が示唆された。 2.汗腺老化に関与する細胞老化関連遺伝子の同定。老齢(60<)の皮膚より単離した汗腺組織と若齢(40>)より単離した汗腺組織における細胞老化関連遺伝子の発現を比較した。評価した細胞老化関連遺伝子は1)細胞増殖関連遺伝子、2)分泌因子関連遺伝子である。老化関連遺伝子のうち細胞増殖関連遺伝子についてはCDKN2Aの発現が老齢組織で高いことが確認された。一方でCDKN1Aの発現の老齢と若齢での差は確認されなかった。分泌関連遺伝子についてはMMP-3とIL-8の発現が老齢組織において若齢組織より高いことが認められた。一方で、MMP-10、IL-6の発現は老齢と若齢組織において変化は確認されなかった。 これらの結果から、幹細胞である筋上皮細胞で細胞老化が生じ、組織形成能に直接低下させていると推測される。また、液性因子発現上昇は分泌因子を介して細胞の増殖、分化に影響し組織形成を阻害している可能性もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は汗腺の老化に関連する遺伝子の同定と、それが汗腺老化を誘導する機序の解明、そして培養細胞を用いた汗腺モデルを利用した汗腺老化制御成分のスクリーニングを目指す。 本年度の研究により汗腺老化の原因遺伝子と考えられる遺伝子の候補を明らかにできた。これにより次年度は同定した遺伝子が老齢汗腺の形成にどのような機序で働いているかを解明するフェイズに移行できる。
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Strategy for Future Research Activity |
汗腺組織の幹細胞である筋上皮細胞による組織の恒常性維持機構が低下していることが、これらのデータから確認された。一方で老化汗腺において分泌関連遺伝子、MMP3、IL-8、の発現が亢進していることから汗腺の老化においては、これらの分泌因子が寄与している可能性がある。汗腺と同じ皮膚付属器官である毛包においては幹細胞の機能の維持において細胞外基質が重要であることが報告されている。細胞外基質の分解機能をもつMMP-3が汗腺の老化においても細胞外基質の分解を介して働いている可能性を次年度では研究する。
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