2023 Fiscal Year Research-status Report
トランス型の脂肪酸を利用した細胞内における一価不飽和脂肪酸の認識機構の解明
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23K10944
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
石橋 賢一 帝京大学, 薬学部, 助教 (00707458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
厚味 厳一 帝京大学, 薬学部, 教授 (70276608)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | トランス脂肪酸 / 一価不飽和脂肪酸 / 脂肪酸識別機構 / リン脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪酸は、エネルギーとして使われるだけではなく、リン脂質やコレステロールエステル、中性脂肪など様々な状態で細胞内に存在し、細胞の構造の維持やシグナル伝達の調節、エネルギー代謝などに関わる。脂肪酸には様々な種類が存在し、脂肪酸が組込まれることで産生される脂質分子種の多様性が細胞機能の維持において重要であると推測される。そのため、脂肪酸ごとに異なる細胞内での振る舞いとその違いを生み出す仕組みを解明することは、脂肪酸による細胞機能の調節機構の解明につながると考える。しかし、脂肪酸の立体構造、二重結合の有無や位置の何が脂肪酸の識別に関わっているのかは定かではない。 我々は、飽和脂肪酸やシス型の不飽和脂肪酸、トランス型の不飽和脂肪酸を用いた解析から、脂肪酸の立体構造より二重結合を強く認識する機構が、細胞内に備わっていないと説明できない現象を見出してきた。そこで本研究では、細胞内で脂肪酸の二重結合の有無や位置の識別に関わる分子機構を明らかにし、脂肪酸ごとに異なる細胞内での振る舞いを生み出す分子機構の一端を解明する。 2023年度では、脂肪酸の二重結合の位置を識別する機構を明らかにするために、炭素数が同じく18であるが二重結合の位置が異なるエライジン酸とバクセン酸に着目して解析を行った。その結果、エライジン酸とバクセン酸では脂質内での分布が異なることや、リン脂質に組込まれる際の部位に違いがあることが明らかになった。さらに、これらの脂肪酸はそれぞれ異なる脂肪酸によってリン脂質への組み込みが競合されることが分かった。これらの結果から、脂質への組み込みに関わる分子は脂肪酸の二重結合の位置も見分けている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度では、どのような分子が一価不飽和脂肪酸の認識機構に関わっているのかを絞り込むことを当初の目的としていた。予定していたアプローチ方法とは異なるが、リン脂質の合成に関わる分子が候補として挙がったため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度では、一価不飽和脂肪酸の認識機構に関わる分子の特定を目指す。遺伝子組換え実験によって、候補分子の発現量を調節した際に、エライジン酸やバクセン酸の識別にどのような影響があるのかを質量分析計を用いて解析する。
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Causes of Carryover |
計画段階では、細胞株を作製した上で網羅的な解析を行い、候補分子を探索する予定であった。しかし、今年度は焦点を絞った解析が中心となり、多くの費用が必要となる細胞株の作製や網羅的な解析を行わなかったため、次年度使用額が生じた。
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