2023 Fiscal Year Research-status Report
3次元データを用いた疑似画像生成による2次元単純X線AI病変検出モデル確立
Project/Area Number |
23K11253
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
小橋 昌司 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00332966)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 芳一 兵庫県はりま姫路総合医療センター(研究部), 研究部, 研究員 (30243306)
村津 裕嗣 兵庫県はりま姫路総合医療センター(研究部), 研究部, 研究員 (30273783)
圓尾 明弘 兵庫県はりま姫路総合医療センター(研究部), 研究部, 研究員 (00899718)
佐貫 毅 兵庫県はりま姫路総合医療センター(研究部), 研究部, 研究員 (90514943)
八木 直美 兵庫県立大学, 先端医療工学研究所, 准教授 (40731708)
藤田 大輔 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (90907867)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 疑似2次元画像生成 / 深層学習モデル / 骨盤骨折検出 / 便秘診断支援 / 転移学習 / 3次元画像データ / 単純X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの診療科で単純X線は基本的な画像診断手法とされているが,診断の見落としが喫緊の課題であり,人工知能を用いた診断支援の必要性が高まっている.検出モデルの学習には専門医による大量のアノテーションが必要であるが,高品質な学習データの入手が困難である.本研究では,CTなどの3次元データを活用して病変や臓器を自動検出し,疑似2次元画像化技術により高品質な学習データを生成する新しいアプローチを提案する.このアプローチにより,単純X線だけでは判断が困難な微細な疾患を高精度に検出することが可能となる.本研究では,単純X線を用いた骨盤骨折検出と便秘診断支援を実施した. 骨盤骨折は,骨盤の複雑な構造から診断が困難であり,迅速な診断が合併症や死亡率の低減につながる.本研究では,3D-CTからデジタル再構成(DRR)で合成された疑似骨盤単純X線を用いた深層学習モデルの二段階転移学習アプローチを提案し,その有効性を検証した.視認可能な骨折に対するAUROCが0.9327,視認不可能な骨折に対するAUROCが0.8014であり,ImageNetベースの方法(視認可能な骨折で0.8908,視認不可能な骨折で0.7308)と比較して優れた性能を示した. 便秘の有訴者率は2019年で34.8%と高く,特に高齢化に伴い増加している.腹部単純X線から便秘の重症度やタイプを判断するためには習熟が必要である.本研究ではU-Netを用いた腹部単純X線からの便とガスの領域の自動抽出法を提案し,便量を評価するSVSとガス・便量を総合的に評価するJVSを新たに提案した.この自動化技術により,熟練消化器内科医の評価結果と比較して,ガス量指標GVS,SVS,JVSでそれぞれ相関係数は0.895,0.879,0.586であり,DICE係数はそれぞれ0.650,0.474,0.640と非常に高精度が得られた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨盤骨折検出においては,疑似2次元画像生成技術を用いた二段階転移学習アプローチが従来法と比較して高い性能を示している.今後は,骨折の正確な位置を特定する局在化技術へと進化させる計画である.また、画像を分割することにより学習データ数を増やすことで,AIモデルの学習効率と精度をさらに向上させることを期待している.さらに,この技術を腰椎,胸椎,頸椎など他の重要な領域にも適用し,全身の骨折診断能力を高めることを目指している. 便秘診断においても,これまでの研究で便とガスの領域抽出が高精度で行われており,求められた指標値は臨床医の手作業による指標値と高い相関を示している.今後は臨床への応用を目指して,検出性能を複数の専門医や専攻医によって評価する.さらに大腸領域に特化した性能評価と便やガスの量の定量化法を検討する.また,腎臓上での便やガスの誤認識を避けるための腎臓領域抽出技術の提案や,腰椎の骨孔がガス領域と誤認識される問題の解決にも取り組む.さらに,抽出した便やガス領域を用いて便秘のタイプを認識する新たな診断アルゴリズムの開発も進める.
|
Strategy for Future Research Activity |
骨盤骨折検出においては,疑似2次元画像生成技術を用いた二段階転移学習アプローチが従来法と比較して高い性能を示している.今後は,骨折の正確な位置を特定する局在化技術へと進化させる計画である.また、画像を分割することにより学習データ数を増やすことで,AIモデルの学習効率と精度をさらに向上させることを期待している.さらに,この技術を腰椎,胸椎,頸椎など他の重要な領域にも適用し,全身の骨折診断能力を高めることを目指している. 便秘診断においても,これまでの研究で便とガスの領域抽出が高精度で行われており,求められた指標値は臨床医の手作業による指標値と高い相関を示している.今後は臨床への応用を目指して,検出性能を複数の専門医や専攻医によって評価する.さらに大腸領域に特化した性能評価と便やガスの量の定量化法を検討する.また,腎臓上での便やガスの誤認識を避けるための腎臓領域抽出技術の提案や,腰椎の骨孔がガス領域と誤認識される問題の解決にも取り組む.さらに,抽出した便やガス領域を用いて便秘のタイプを認識する新たな診断アルゴリズムの開発も進める.
|
Causes of Carryover |
次年度の使用額が生じた理由として、工学的な研究が想定以上に進行していることが挙げられる。このため、さらなる性能と機能向上を目指せると判断し、それらを含んだ臨床評価研究を見直す必要が生じた。また、研究成果を保護するための特許出願をするため,予定していた学会での発表が行えなかったため、その分の活動を次年度に持ち越す必要がある。 次年度の使用計画としては、複数の施設と連携した前向き研究と多施設共同研究を実施し、開発技術の臨床現場での有効性と安全性を広範囲に評価する予定である。これにより、開発技術の普遍性と適応性に関する重要なデータを収集することができる。また、特許出願等の知的財産保護も計画しており、研究成果の社会的な認知と実用化に貢献する。また、研究成果は学術論文としてまとめて、査読付きの学術雑誌に投稿するほか、国内外の学会での発表も積極的に行い、広範なフィードバックを得ることを目指している。 これらの活動を通じて、技術の成熟と臨床応用の道を加速させると同時に、研究の持続可能性と影響力を強化していく計画である。特に、多施設共同研究から得られるデータは、技術の広範な適用に必要な証拠となり、特許出願や学術発表は、研究成果の保護と共有に不可欠である。
|