2023 Fiscal Year Research-status Report
Bioconservation research with lattice linkage model
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23K11264
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中桐 斉之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (30378244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 一憲 静岡大学, 工学部, 准教授 (30261382)
向坂 幸雄 中村学園大学短期大学部, 幼児保育学科, 准教授 (90419250)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | シミュレーション / 生息地 / 移住 / マイグレーション / 絶滅 / 生物多様性 / 格子モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上には、数多くの絶滅の危機に瀕した生物種が存在する。生物種や生息地の保護・保全は、生物多様性保全にとって重要な課題となっている。一般的に、生物種の生息している生息地は一様でなく、むしろ空間的に離れた小さな領域のパッチのネットワークで構成されている。その際、生物の個体はパッチ間を移動している。本課題においては、これらの複数のパッチ間を移動する生物のモデル化において、申請者らが開発した格子リンクモデルを用い、計算機シミュレーションによる解析を行うことで研究する。 本研究課題で用いる格子リンクモデルは、格子を生息地(パッチ)とみなして格子を接続し格子間を移動可能とするモデルである。具体的には、エージェントもしくは個体ベースのモデルを用い、コンタクトプロセス(出生と死亡のプロセス)を2つもしくはそれ以上の格子上で行う。それらの格子は接続されており、エージェント(個体)は各々のパッチに存在し、パッチ間をランダムに移動する。その際、空のセルがなければ移動は不可能となっている。このようにして、エージェント(個体)の移動を行い、格子上に生息する生物の個体群動態をシミュレーション解析する。 本研究では、この格子リンクモデルの特性を活かして、パッチ自体やパッチ間を保護するなどしてパッチ間を移動する生物を保全する際、パッチの接続関係や空間構造が生物にどのような影響を及ぼすかをシミュレーションによって解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、最初に、格子リンクモデル上に、コンタクトプロセスを適用し、1種類の生物が2つの生息地(パッチ)間を移動するときの個体群動態を解析した。具体的には、パッチ間の移動率および移動の有無が個体群の持続可能性に与える影響を計算機シミュレーションによって解析をした。 とくにコンタクトプロセスにおけるパッチ間を接続する経路の違いと、生息地における増殖率や死亡率、移動率が及ぼす影響を解析した。数理解析およびシミュレーションを行った結果、増殖率を小さな0に近い値にする、もしくは、死亡率を大きな値にすると、生物の個体群密度が減少し、絶滅すること、絶滅点はシミュレーションと平均場近似で異なることがわかった。また、パッチ間の移動があると絶滅しにくいことが分かった。これは、パッチ間の移動が起こることで生息地内の空間分布が分散傾向となるため増殖がしやすくなったためであると考えられる。これらの結果は、日本数理生物学会と情報処理学会で発表を行った。 その後、パッチ数を3パッチへ拡張し、3パッチ間の移動する際の個体群動態についても計算機シミュレーションによる解析を行っている。3パッチにおいては、全てのパッチを接続する完全グラフのようなパターンと、2つのパッチの間にハブとなるパッチが接続されているパターンの2つにおいて、パッチの死亡率とパッチ間の移動率を変化させた影響について解析を行い、パッチを接続することが必ずしも保全に良い結果をもたらさないことが明らかになった。この結果はEcological complexity誌に掲載が決定した。以上のように、令和5年度の予定をおおむね順調に進展させている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、構築したモデルを基に、計算機上で各種構造を持つ生態系を実現していく予定である。特に多種系におけるモデルを解析し、格子の繋がり方と格子の空間構造の違いによって、生物個体群にどのような影響を及ぼすのかを、個体群動態への影響という観点から解析していく。 生息地の繋がり方は現在は双方向であったため、その後は、生息地間の移住をどちらかの一方通行に制限することで、生息地のつながり方に方向性が及ぼす影響を解析していく。 具体的には、パッチ間の移動を隣のパッチへ流出するだけの実験と隣のパッチから流入するだけの実験を行い、生息地間の移住が双方向の場合と、どのように異なるか、生物個体群のダイナミクスを解析していく予定である。 その後、さらにモデルを拡張し、より複雑であるが、実際の生態系に即したモデルを構築し、生息地の画像データ等から得た生息地データもとに、モデルに適用して、実際の生態系に近いモデリングとシミュレーションを行うなどを予定している。
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Causes of Carryover |
研究プロジェクトが当初計画していたよりも、基礎モデル部分の解析が必要となることが判明し、その解析が必要となった。しかし、基礎モデルの解析にはあらたな計算機資源が必ずしも必要とならなくないことが分かったため、新たな計算機を用いて行う実験を来年度に回すこととした。そのため、今年度の使用額を次年度の使用額に振り替えすることした。 次年度は解析が終わった基礎モデルを発展させたモデルを用いて行われる計算機実験を行う予定であり、計算に伴う技術的な課題に対処するための追加の機器や計算機の購入を行って研究の円滑な進行を確保する予定である。 また令和5年度は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って研究打ち合わせや学会発表等の回数を制限してきたため旅費の使用が少なくならざるを得なかった。しかし、次年度は、新型コロナウイルス感染症も落ち着いてきたため、研究打ち合わせや学会等の発表の回数を増やして行く予定であるため、旅費の使用を増やす予定である。
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