2023 Fiscal Year Research-status Report
アミノ酸残基間コンタクトで見るアロステリック効果のメカニズムと進化
Project/Area Number |
23K11313
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
本野 千恵 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (80415752)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アロステリック効果 / タンパク質 / 残基間コンタクト / 進化 / 分子動力学シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は以下の通りである。①MD計算結果から、残基間コンタクトを比較して、アロステリック効果を伝える分子内ネットワークを推定する手法の提案②多数の相同なタンパク質のアロステリックネットワークの差異を解析し、保存性の程度や保存のメカニズム(相互作用する残基の共進化、不活性化変異を相補する別のネットワーク形成、etc)に統一的な見解が得られるかの考察。 2023年度は、①について、現状のMD計算トラジェクトリ比較ソフトウェアMContactComを用いる手法を、複数の疾患関連変異体タンパク質へ適用して検討した。その結果を国際シンポジウム・第8回ケモインフォマティクス秋の学校のポスターの一部として発表した。手法の精度については実験による検証が必要だが、半数近くで、変異が離れた分子表面へ影響を与える可能性(アロステリー)を検出した。また、現在のMDContactComは、残基番号が揃っているタンパク質間の比較しかできない。相同タンパク質に適用できるように、配列アラインメント機能追加と、それに伴う残基毎の類似度計算部分の見直しを行っているが、進捗はやや遅れており完成に至っていない。 ②については、①でMDContactComが相同タンパク質に適用可能になってから実施する。今年度はデータセットの検討を開始した。創薬的に重要である、相同タンパク質の実験データが揃っているという観点から、文献精査と、AlloSteric Database (ASD)の利用で対応している。アロステリック効果を生じさせるアロステリック調節因子として、化合物や核酸などの結合によるデータはASDから選択している。タンパク質のアミノ酸変異によりアロステリック効果が生じるデータは、ASDに含まれないため、文献調査により選択している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「①MD計算トラジェクトリ比較ソフトウェアMDContactComの拡張」に関しては、計画していなかったが必要と判断して、拡張前の段階でのアロステリック効果検出について検証を行った。結果を学会発表に含めたが、その分、ソフトウェアの拡張に関しては進捗が遅れている。 「②アロステリック効果の伝搬経路と進化を残基間コンタクトに基づく解析」は、①でソフトウェア機能を拡張した後に実施する計画である。必要なアロステリックタンパク質のデータセットの準備は可能であるため、前倒しで開始したため、進捗は計画より進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、計画の「①MD計算トラジェクトリ比較ソフトウェアMDContactComの拡張」を完了させる。相同タンパク質に適用できるように、配列アラインメント機能追加と、それに伴う残基毎の類似度計算部分の見直しを予定している。本手法が、どの程度の配列相同性まで対応可能かの検証が重要かつ困難であり、時間を要すると想定している。時間的に厳しい場合は、プログラムのブラッシュアップは、外注で対応することも考える。また、2024年度までに、ソフトウェアの公開と論文発表を行う。 計画の「②アロステリック効果の伝搬経路と進化を残基間コンタクトに基づく解析」は、大量の分子動力学計算に時間がかかるため、①のソフトウェアが完成次第、2024-2025年度で計算する。解析、学会発表を2025年度に行い、論文化を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度に分子動力学計算実行などのためにGPUサーバーの購入を想定していた。しかし、以前に購入したGPUサーバー、および他予算により購入したGPUサーバーに、プロジェクトの進捗具合から空きが生じたため、必要な計算を全て投入することができるため、新たなGPUサーバーの購入を見送り、次年度使用額が生じた。今後、「多数の相同なタンパク質のアロステリックネットワークの差異の解析」に、GPUサーバーが必要となるため、現在の計算環境で足りるか、翌年度分助成金で購入するかを慎重に見極める予定である。購入を見送る場合、「MD計算トラジェクトリ比較ソフトウェアMContactComの拡張版」開発が予定より遅れているため、外注によるプログラムのブラッシュアップに使用する予定である。
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