2023 Fiscal Year Research-status Report
代謝振動を用いた脂肪と筋肉からのレプチンおよびインターロイキン-6分泌機構の解明
Project/Area Number |
23K11317
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
柴田 賢一 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 非常勤教員 (90753799)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 代謝振動 / 白色脂肪細胞 / 褐色脂肪細胞 / 筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
体重の50%を占めている筋肉と脂肪が、ホルモンを分泌する事が近年判明した。それらのホルモンは糖代謝や免疫に関するものが多く、糖尿病やがん、感染症などへの影響が大きい。しかし、脂肪細胞と筋細胞のホルモン分泌機構は未解明な部分が多い。また、膵臓のβ細胞ではインスリン分泌と代謝が密接に関連していることがよく知られているにも関わらず、脂肪細胞においては代謝との関連性はしばしば見過ごされている。そこで本研究では、糖代謝とホルモン分泌の関係を代謝振動を用いて解明することを目的とした。加えて、熱産生によりエネルギーを消費し、肥満の予防に一役買っているとされる褐色脂肪細胞についても研究している。褐色脂肪細胞については、ホルモン分泌もさることながら、最たる特徴である発熱と代謝振動の関連性に着目している。 本年度の研究により、十分な確証が得られていないものの、筋細胞C2C12細胞においてミトコンドリア膜電位振動のような現象が観察することができた。また、以前から研究を進めている白色脂肪細胞3T3-L1では既にMMP振動の初観測に成功している。本年度は、さらに細胞内カルシウム(Ca)振動の観測にも成功した。どちらの振動もインスリン刺激によって誘発することができた。今回観測した細胞内Ca振動の波形は、膵臓のβ細胞における細胞内Ca振動と非常によく似ており、β細胞と同様に白色脂肪細胞においても糖代謝振動とホルモン分泌が連関している可能性が示唆された。さらに、褐色脂肪細胞C3H10T1/2におけるMMP振動の観測にも成功した。振動はアドレナリン受容体を刺激する物質イソプロテレノールによって誘発された。白色脂肪細胞と異なり、褐色脂肪細胞のMMP振動は全ての細胞で完全同期していた。褐色脂肪細胞はアドレナリン受容体を刺激すると発熱することが知られており、振動や同期と発熱との関連性が着目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白色脂肪細胞でも褐色脂肪細胞でもMMP振動の観察に成功しており、特に白色脂肪細胞においてはCa振動の観察にも成功している。また、本年度から使用し始めた筋細胞でもMMP振動と思われる挙動の観察に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
白色脂肪細胞については、振動を起こしやすい条件を検討し、最も振動しやすい条件についてレプチン振動の有無を観察する。 褐色脂肪細胞については、アドレナリン受容体を刺激することで発熱するとともに幾つかのホルモンを分泌することが知られている。そこで、褐色脂肪細胞特有の現象である発熱について、代謝振動との関係を明らかにする。ついで、発熱とともに分泌されるホルモンのうち着目するホルモンを特定した上で、そのホルモンの分泌が振動するかどうかを実験的に調べる。 筋細胞については、代謝振動であるかどうかを確定させた上で、代謝振動を引き起こす条件を検討する。その後に、IL-6分泌の振動についても検討する。 すべての細胞について、順次、各種阻害剤や活性化剤を用いて振動メカニズムやホルモン分泌との関連性について解明を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究室全体の予算を鑑みた結果、電気刺激装置(SEN-3401MG)の購入を断念したためである。 筋細胞は収縮時以外にもホルモンを分泌するため、電気刺激以外の方法でホルモン分泌を促し、ホルモン分泌と代謝との関連性を解明していく。そこで、生じた次年度使用額は、ホルモン分泌を促す生理活性物質や、その他分泌メカニズム解明のための活性化剤や阻害剤の購入に使用する計画である。
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