2023 Fiscal Year Research-status Report
study on a method to facilitate a skill to design problem representation for promotion of computational thinking
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23K11353
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小島 一晃 帝京大学, 理工学部, 准教授 (30437082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 和久 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90219832)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 問題表現 / 問題解決モデル / コンピュテーショナルシンキング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,コンピュータ科学者のように思考するコンピュテーショナルシンキング(CT)に注目が集まっており,現代の問題解決においては誰にとっても重要な思考スキルであるとの認識から,初等中等教育を中心としてプログラミングを通じたCT育成の取り組みが進んでいる.CTの育成は情報科学の専門教育ではないため,主に初心者用のビジュアルプログラミング環境などを用いて,学習の負荷を軽減することが図られている.しかし,この学習負荷軽減によって,問題表現の設計などのCTに関連する活動の一部があまり経験されない可能性がある.CTは問題分割,パターン認識・一般化,抽象化,自動化などの複数の構成要素から成ると考えられているが,問題表現に関する活動は問題分割やパターン認識・一般化を発展させる可能性があるため,CTの伸展において有効であると考えられる. 令和5年度においては,情報科学を専門としない大学生を対象とし,初等中等教育で身に着けたCTのスキルを高めるための学習課題と,その学習を支援する手法を考案した.この学習課題には,問題解決を分析して客観的に表現し,それをモデル化して計算機にシミュレートさせるという,認知科学の分野におけるコンピュータ科学者のアプローチを適用した.学習者がモデル化・シミュレーションを行う環境にはプロダクションシステムを採用し,初心者がプロダクションシステムにおけるモデル化を学ぶための教材の作成,ならびに問題表現に焦点を置いてモデルを構築する学習活動の設計を行った.その上で問題分割とパターン認識・一般化の負荷を軽減することで,学習者は問題表現の設計にのみ焦点を置いてモデル構築を経験することが可能な学習環境を試作した.このモデル構築を通じた学習により,客観的に問題と解を表現する能力を高められ,CTのスキルが拡張されることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,情報科学のトレーニングを受けていない大学生がモデル構築とシミュレーションを学ぶための教材のコンテンツの作成,ならびに低負荷でモデル構築における問題表現の設計を経験する課題の考案を達成した.また,教材でモデル構築を学んだ上で課題を実行するための学習環境を試作し,情報科学を専門としない大学一年生に学習課題を経験させる予備調査も実施した.調査の結果,課題を経験して問題表現の重要性と難しさに気付いたという言及が見られたものの,少し複雑な問題解決の教材コンテンツや,課題における問題表現の設計に失敗する例が比較的多く観察された.そのためコンテンツの一部の見直し等が必要とはなったが,当初計画に則って次年度はこの課題の支援手法の実現とその検証に進む.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度の取り組みに基づき,令和6年度は学習支援手法の検討と実現を行う.問題表現の設計について学ぶコンテンツを教材に追加するとともに,設計した問題表現を学習者自身が評価する活動やその支援方法について考案し,拡張機能として学習環境に追加する.その上で,本手法の実験的評価を実施する.与えられた問題解決のルールとプロセスに基づいてモデルを記述する問題表現を設計する活動に初学者が成功するか,この活動を通じてCTの他の要素を促進する効果が得られるのかを,実験室において検証する.その結果に基づいて,本研究の最終的な目的である,一般大学生を対象とする情報教育に展開するための授業実践の設計へと繋ぐ.
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Causes of Carryover |
令和5年度の予備調査において,参加者が使用するPCを用意することを想定していたが,研究代表者の所属キャンパスにおいて全箇所での学生端末必携の制度が開始され,参加者が全員PCを所持していた.令和6年度以後は端末必携の制度を実施していない箇所の学生を対象とした実験も必要となるため,PCを購入する予定である.
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