2023 Fiscal Year Research-status Report
根呼吸と植物の水利用特性のlinkage:陸上生態系炭素循環モデルの精度向上を目指して
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23K11392
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
坂田 有紀子 (別宮有紀子) 都留文科大学, 教養学部, 教授 (20326094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 剛 北里大学, 一般教育部, 准教授 (60205747)
石田 厚 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (60343787)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 根の呼吸速度 / 蒸散速度 / 日中変動 / 暖温帯性樹木 / 亜熱帯性樹木 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまで、暖温帯林および亜熱帯林を構成する主要樹種を対象として、それらの葉の光合成・蒸散速度と、根の呼吸速度との関係性を明らかにすることを目的に研究をおこなってきた。その一環として、小笠原諸島父島に自生する亜熱帯性低木数種において、野外条件下で、光合成および蒸散速度と、根の呼吸速度の連続測定をおこなったところ、葉の光合成・蒸散速度と、根の呼吸速度の両方が日中に大きく変動するものの、両者に明瞭な規則性や関係性が認められなかった。野外での測定は、刻一刻と環境条件が変化し、根の呼吸速度に影響を与える要因が複数同時に変化するため、両者の関係性を検出しにくい。そこで、実験室内で環境をより厳密に制御しながら、光合成・蒸散速度と根の呼吸速度との関係を確かめる実験をおこなった。対象としたのは、小笠原や他の亜熱帯地域にも広く自生するオオハマボウで、CO2濃度、大気湿度、温度、土壌水分を一定に保ちながら、光強度のみを変化させ、光合成速度・蒸散速度と根の呼吸速度の連続同時測定をおこなった。その結果、オオハマボウでは、光のオン・オフに伴い、光合成・蒸散速度が大きく変化し、それに伴い、根の呼吸速度もほぼ同時に同じパターンで変化を示した。詳細な解析の結果、オオハマボウでは、光合成速度よりも蒸散速度の変化と根の呼吸速度の変化が同調しており、相関係数も高かった。また、実験室内において、夜間、暗黒環境下で根の呼吸速度の連続測定をおこなったが、温度が一定であるにも関わらず、呼吸速度が大きくなる時間帯が存在することが観察された。これが何に起因するものなのか、現在のところ不明であるが、構成呼吸のようなものである可能性が考えられる。今後は、他の樹種においても、野外環境と実験室内の両方において、MEMSセンサーを用いながら、植物各部位における水移動と根の呼吸速度の関係性について明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、所属組織において学科長を担当しており、その業務が多忙を極まるため。
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Strategy for Future Research Activity |
R6年度には、研究協力者(学生2人)と、室内実験と野外測定の両方を進める予定であり、研究の遅れを取り戻せると考えている。また、植物の枝や茎、根などの細部に装着し水の移動速度を測定できるMEMSセンサーを使った測定も開始できる見込みである。今後はこのMEMSセンサーを用いて、蒸散速度の変動と、植物体内の水移動速度の変化、根の呼吸速度が、どのように連動して変動しているのかを明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
R5年度は大学業務が多忙を極め、当初予定していた小笠原諸島の亜熱帯林や冷温帯針葉樹林での野外調査が全くできなかった。R6年度は、夏に小笠原諸島に研究協力者の学生2人と野外調査および室内実験をおこない、またMEMSセンサーを新たに導入した測定システムの構築のために、酸素濃度計やデータロガー、PC等を購入する予定である。これらの研究活動、物品購入のために使用する。
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