2023 Fiscal Year Research-status Report
北半球高緯度域における干ばつ・豪雨に対する樹木脆弱性の把握とリスクの地図化
Project/Area Number |
23K11397
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
鄭 峻介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40710661)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 樹木年輪 / 脆弱性 / 北半球高緯度域 / 気候変動 / 極端気象 |
Outline of Annual Research Achievements |
北半球高緯度域(北緯50°以北)における極端な少雨・大雨イベントに対する樹木応答・脆弱性を評価する第一歩として、観測ベースの降水量時系列データ(Climate Research Unit 0.5°月平均グリッドデータ)と樹木年輪国際データベース(International Tree-Ring Data Bank)に登録されている1700強のサイトにおける樹木年輪幅時系列データを活用して、過去に観測される極端な少雨・大雨イベントと樹木成長量減少イベント(サイト内の70%以上の個体の成長量が過去5年間の平均成長量から30%以上減少した年)の対応関係を調べた。 過去に観測される季節ごとの極端な少雨・大雨イベントは、観測ベースの降水量時系列データを用いて、過去120年間の平均値からの外れ具合(>2σ)で検出した。また、樹木年輪国際データベースに登録されている樹木年輪幅時系列データから過去の成長量変動を復元し、サイトごとに過去120年間における樹木成長量減少イベントを検出した。 極端な少雨・大雨イベントの観測頻度は北半球高緯度域において大きな空間変動を示し、その変動パターンは対象とする季節によっても大きく異なっていた。夏季の極端な少雨・大雨イベントに対応した樹木成長量減少イベントの観測頻度が高かったが、夏季以外の季節の極端な少雨・大雨イベントに対応する樹木成長量減少イベントも多くのサイトで観測されることが分かった。また、極端な大雨イベントに対応した樹木成長量減少イベントの観測頻度については事前の想定よりも高く、極端な少雨のみならず、極端な大雨の影響も北半球高緯度域の樹木動態把握に必要不可欠であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は研究が概ね順調に進展したと考えている。当初計画で示した、過去120年間の観測ベースの降水量時系列データ(Climate Research Unit 0.5°月平均グリッドデータ)を用いて、北半球高緯度域(北緯50°以北)における過去の極端な少雨・大雨イベントの時空間変動を整理するとともに、それらに対応した樹木成長量減少イベント(サイト内の70%以上の個体の成長量が過去5年間の平均成長量から30%以上減少した年)の抽出まで実施することができた。計画していた学会等での成果発表は達成できなかったが、次年度に実施する目途が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
北半球高緯度域(北緯50°以北)における過去の極端な少雨・大雨イベントに対する樹木応答・脆弱性を評価する。具体的には、樹木年輪国際データベース(International Tree-Ring Data Bank)に登録されている1700強のサイトにおける樹木年輪幅時系列データから、極端な少雨・大雨イベントに対応した樹木成長量減少イベント時の抵抗(イベント時の成長量/イベント前5年間の平均成長量)・回復(イベント後5年間の平均成長量/イベント時の成長量)・回復力(イベント時の減少量で重みづけしたイベント前後5年間の平均成長量比)の各種パラメータ値を推定する。それらパラメータ値を指標とすることで、極端な少雨・大雨イベントに対する樹木応答・脆弱性の時空間変動を明らかにする。特に、回復力に着目し、回復力が低い個体の割合の多いサイト・地域を明らかにするとともに、その時間変化についても明らかにする(回復力が低い個体の割合が増えている/減っている)。回復力が低い、もしくはそれが減少傾向にあるサイト・地域に関しては、抵抗・回復のどちらがその要因となっているのかを明らかにし、極端な少雨・大雨イベントに対する樹木応答メカニズムの理解を深める。
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Causes of Carryover |
当該年度に計画していた学会での成果発表が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度の成果発表のための経費として利用する予定である.
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