2023 Fiscal Year Research-status Report
脱塩基部位-タンパク質クロスリンクにより開始する新規DNA損傷トレランス経路
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23K11418
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
増田 雄司 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (30273866)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | DNA損傷トレランス / DNA脱塩基部位 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA損傷はがん化や老化プロセスを促進する主要な原因の一つであり、内因性/外因性のDNA損傷に対する細胞応答機構の重要性が指摘されている。脱塩基損傷は主要な内因性のDNA損傷であり、動物組織の細胞では非常に多くの脱塩基損傷が定常的に存在している。脱塩基損傷は内/外因性の酸化反応に起因するだけではなく、生命現象さまざまな局面(APOBECによる副反応、免疫細胞での体細胞超突然変異、受精卵の初期化過程) で生じ、ある局面では突然変異を誘発する一方、別の局面では突然変異を抑制する未解明の制御機構の存在が示唆される。本研究では脱塩基損傷から細胞を保護するために必要な未解明の制御メカニズムを明らかにすることを目的として研究を推進している。 HMCES (5-hydroxymethylcytosine binding, ES cell specific)は、 一本鎖DNA上の脱塩基損傷に特異的にクロスリンクすることで、脱塩基損傷を安定化する酵素である。 HMCESはS期特異的に発現し、複製フォークの一本鎖DNA上に生じた脱塩基損傷にクロスリンクすることで、 脱塩基損傷から細胞を保護する機能をもつと考えられている。 ゲノムDNAに結合したHMCESはプロテアソームによって分解されることが示唆されているが、HMCESのクロスリンク部位の一本鎖DNA領域がどのように複製され、最終的に傷のない二本鎖DNAにどのように回復するのかについては全く未解明であった。本研究では、HMCESのクロスリンクおよび、プロテアソームによって分解されることで二時的に生じた損傷が、DNA複製を強く阻害することを見出した。またそれら損傷の修復経路を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、HMCESのクロスリンクおよび、プロテアソームによって分解されることで二時的に生じた損傷が、DNA複製を強く阻害することを証明し、またそれら損傷の修復経路を同定した。これらの成果はNucleic Acids Rsearchに発表しており、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、HMCESの機能制御に関連した候補遺伝子のスクリーニングを行い、 それら遺伝子の機能解析を行うことで、HMCESの制御メカニズムの全容を明らかにすることを予定している。
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Causes of Carryover |
研究中に予想外の結果が得られ、予定外の検討を行ったために、あらかじめ予定された研究の進捗に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。次年度には予定された研究の遅れは解消される見込みである。
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