2023 Fiscal Year Research-status Report
細胞内架橋分子Plectinの放射線誘発DNA損傷応答における新規機能の解明
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23K11425
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
松井 理 金沢医科大学, 医学部, 助教 (60288272)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Plectin / p53 / 53BP1 / USP28 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、Plectinを欠損させた細胞では、通常X線照射後に観察されるp53の蛋白量の増加が強く抑制され、その結果p53による標的遺伝子p21の発現誘導が著しく抑制されることを見出した。細胞内におけるp53の蛋白量はp53のユビキチン(Ub)化の状態に依存しており、Ub化および脱Ub化によって制御されている。X線が照射されていない細胞では通常p53のUb化が亢進しており、そのためプロテアソームによる分解により細胞内p53量は低く抑えられている。一方、X線照射等によりDNA損傷が誘発されるとp53のリン酸化によりUb化が阻害され、続く脱Ub化によりp53は安定化し蛋白量が増加する。前述のように、Plectin欠損細胞ではX線照射後のp53量の増加が抑制されることから、我々はPlectinがp53のUb化量の低下に関与していると考えた。さらに解析を進めた結果、Plectinがp53を脱Ub化するUSP28-53BP1複合体と相互作用することを見出したことから、Plectinがp53のUb化状態の制御に関与していることが示唆された。そこで、本研究ではまず、Plectin欠損細胞についてp53の安定性への影響を調べた。siRNA処理によってPlectinを欠損させたU2OS細胞について、シクロヘキシミド添加後120分までの細胞内p53量を経時的に調べ、Plectinを欠損させていない細胞と比較したところ、両者の間に明確な差は認められなかった(半減期はともに約45分)。ただ、今回の解析におけるPlectin欠損細胞には、これまでの解析と比較してより多くのPlectinが残存していることが判明したことから、原因としてPlectin欠損が不十分であった可能性が考えられた。現在、試薬や細胞を変えるなどして実験条件の改善を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
siRNAによるPlectin欠損細胞を作製する過程において、実験上の不具合が発生したことにより、この問題の解決のために時間を要したことから研究計画に遅延が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
以前までの解析では全く問題がなかったsiRNAを用いたPlectin欠損細胞の作製において実験上の不具合が生じているので、まずはこれまで用いてきたsiRNAおよびトランスフェクション試薬を新品に交換することで問題の解決を図る。これで解決できない場合、siRNAについては配列上の問題等はないと考えられるので、トランスフェクション試薬についてのみ別の新しい試薬への変更等を検討する。また、siRNAを用いてPlectinの欠損(ノックダウン)させる方法とは別に、CRISPR/Cas9を用いてPlectinを欠損(ノックアウト)させたU2OS細胞を既に作製しているので、これらを解析に併用する。
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Causes of Carryover |
研究の進行に遅延が生じ、遅れた分の研究計画に伴う経費を次年度に持ち越ししたため。持ち越した経費については未達分の研究計画の遂行に使用する。
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