2023 Fiscal Year Research-status Report
Research on Environmental Adaptation for Genetic Management of Endangered Freshwater Fish in Small Populations
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23K11448
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中野 繭 (小西繭) 信州大学, 先鋭領域融合研究群社会基盤研究所, 特任助教 (00432170)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 種間比較 / 密度効果 / 生活史 / 環境適応 / 淡水魚 / 小集団化 / 保全生態学 / 遺伝的管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、日本産モツゴ属魚類2種を対象として、本属において着目されることのなかった生活史形質の種間差を明らかにするために飼育実験を実施した。そして、これまでの研究から予測された4つの仮説のうち「止水を好む絶滅危惧種シナイモツゴは、外来種モツゴと比較して、高密度条件下において成長速度の個体差が小さく、死亡率が低い」について検証を行った。 モツゴ属魚類の繁殖期である4月から7月に、構内で継代飼育してきた親魚(シナイモツゴ2系統、および、モツゴ2系統)を用いて繁殖させ、実験に用いる個体を合計1883個体を作出した。これらの個体を用いて、シナイモツゴ(計30実験群)およびモツゴ(計32実験群)のそれぞれについて高密度群、低密度群をほぼ同数作成し、温室にて個別プラスチック水槽を用いて飼育実験を開始した。2ヶ月に1回程度、水槽ごとにサンプル群の画像を撮影し、PC上で体長計測と個体数の計数を行った。 その結果、2024年春の時点における各実験系の生残率の平均は、シナイモツゴ 63.4 %、モツゴ 71.0 % であった(2023年秋に感染症により生残率が著しく低下したシナイモツゴ実験群 (N = 6)は除外した)。各実験系ごとの生残率は、シナイモツゴ高密度群で最も高く(80.1%)、モツゴ低密度群 (74.2 %)、モツゴ高密度群 (67.8 %)、シナイ低密度群 (46.7 %)であった。体長の変動計数CV(ばらつき)は、モツゴ高密度群で最も高く (14.1 %)、次にモツゴ低密度群 (13.2 %)、シナイモツゴ高密度群 (11.7 %) 、シナイモツゴ低密度群 (8.9 %)となった。 以上の結果より、シナイモツゴはモツゴと比較して、高密度化において死亡率が低く、均一に成長することが明らかとなり、シナイモツゴが閉鎖的な止水域に適応している可能性を強く支持した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、当該年度においてゲノム解析を実施する予定であったが次年度に行うこととした。これは飼育実験のプロセスで発生した感染症の対応が当初の予定よりも労力を要しためである。飼育個体は、二年目にも用いる計画となっており、サンプル数の減少は今後の進捗やデータの信頼性にも大きく関わるため、絶対に避けなければならなかった。結果として、高い生残率を達成できたので概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、飼育実験を継続するとともに、一部の実験群を用いて、オスの繁殖戦術に関する種間比較(行動観察)、ならびに、成熟タイミングに関する種間比較(生殖腺組織観察)を実施する。また、全ゲノムの種間比較のためのゲノム解析に着手し、一年目の飼育実験で観察された形質がシナイモツゴの適応的形質であるのか、あるいは、過去に経験した小集団化とそれに引き続く遺伝的多様性の喪失に起因するのか否かについて検証する。
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Causes of Carryover |
研究計画では、当該年度においてゲノム解析を実施する予定であったが進捗状況の都合により、次年度に行うこととした。
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