2023 Fiscal Year Research-status Report
環境へ流出した微小プラスチックの劣化に着目した汚染物質の蓄積プロセスの検証
Project/Area Number |
23K11459
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
三小田 憲史 富山県立大学, 工学部, 講師 (80742064)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / 水環境 / 吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラスチック粒子に対する屋外および人工太陽光を使った劣化試験を行った。2023年度は夏季から秋期にかけて屋外でのばく露を実施し、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレン粒子を石英容器に入れて太陽光にばく露した。これらの粒子は回収後にFT-IRや電子顕微鏡(SEM)で観察を行った。また、多環芳香族炭化水素を対象とした吸着実験にも供試して。屋外で太陽光に曝露させた粒子ではポリエチレン粒子において黄変が確認され、FT-IRの測定結果でもカルボニルインデックスの値がばく露時間に伴い増加したことから、酸化劣化の進行が確認された。また、SEMによる観察ではばく露時間とともに一部プラスチック粒子表面において凹凸や歪みが見られ、太陽光ばく露による樹脂の崩壊が示唆された。これらの粒子を用いてpyreneを用いた吸着実験を行った。褐色試験管にプラスチックとpyrene溶液を加えて振とう後にpyreneの残留濃度を測定した。吸着量の値は初期濃度によって変化することから、固液分配係数(Kd)の値も用いながら比較した。その結果、屋外に曝露した試料においては未劣化のサンプルと比較して吸着量(Kd)が高い値を示した。また、吸着量の値はばく露時間とともに増加した。さらに、人工太陽光を照射した実験においても同様の傾向が確認されたことから、試験を行ったプラスチック樹脂においては太陽光による劣化は化学物質の蓄積を促進させる可能性があることが示された。 また、秋期から冬季にかけては海岸から採取した砂を用いたプラスチックとの混合実験を行った。富山県の沿岸から採取した砂を洗浄してプラスチック粒子と数日間混合し、砂の中から分離したプラスチックを用いて吸着実験を行った。その結果、混合していないプラスチックと比べてpyreneの吸着量が増加する傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験の結果も踏まえながら、予定していた劣化試験を屋外太陽光と人工太陽下において実施することができた。分析の結果、ばく露時間の長期化に伴い、劣化が進行した一方でモデル物質として対象とした疎水性化学物質の吸着量が増加することが示された。プラスチックの化学分析も一部の項目については行うことができた。また、海岸から採取した砂とプラスチックとの混合による劣化試験についても検討を行った。さらに、海岸におけるプラスチックの調査と採取分析も行っており、進行状況は概ね順調であると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
プラスチックの検体を複数種類収集しており、これらを用いて、劣化の条件やプラスチックの種類を変えながらさらに劣化実験を行い、化学物質の蓄積との関連性についても検証していく。屋外での太陽光ばく露実験では、2023年度に行った実験データを考慮しながら、さらに長期間のばく露期間を設けて実験を行う。また、ばく露したプラスチックの性状を把握するための分析項目も増やすことで、吸着量が増加した理由について物理化学的性質の観点から考察を行う。砂との混合実験では、機械的な劣化によって、断片化したプラスチックが生成したかどうかを確認する。また、断片化に対する紫外線劣化の影響も評価していく予定である。 また、海岸におけるプラスチックを採取して、劣化の様態や化学物質の蓄積濃度についても検証を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
旅費が想定よりも低く抑えられたため。
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