2023 Fiscal Year Research-status Report
尾の周波数測定に基づいた農薬や医薬品を含む水系の評価手法の開発
Project/Area Number |
23K11463
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
甲斐 穂高 鈴鹿工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (50518321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 芳樹 鈴鹿工業高等専門学校, 電子情報工学科, 講師 (30751797)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 魚類行動解析 / 農薬・医薬品 / 尾ひれ周波数 / フーリエ変換 / バイオアッセイ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績の概要は、以下のとおりである。 1)メダカの泳ぎ方(尾ひれの周波数)から水中に存在する農薬や医薬品等を検出するために、まず、円筒形の水槽(内径6cm-水深1.5cm)を速度5rpmで回転させて水槽中のメダカの遊泳を誘発し(メダカは水槽が回る向きに逆らう方向に泳ぐ)、これを動画撮影する測定系を確立した。そして、撮影したメダカの遊泳動画を動画編集ソフトであるPowerDirectorとVisual Studioを組み合わせて解析し、最終的にフーリエ変換を適応して、遊泳中のメダカの尾ひれの周波数を算出するツールを確立できた。 2)対象区のメダカの尾ひれの周波数は、1-30Hzの間で特定の周波数強度を示さなかった。一方で、農薬(イミダクロプリド)と医薬品(抗うつ剤:アミトリプチリン塩酸塩、抗精神薬:クロルプロマジン塩酸塩)を48時間曝露したメダカの尾ひれの周波数は、4-8Hzと24-28Hzの2つの周波数領域で特異的な強度が示され、遊泳に異常が認められた(検定の結果、有意差あり)。また、アミトリプチリン塩酸塩とクロルプロマジン塩酸塩を混合した場合でも、先述と同様の特異的な周波数強度が示された(検定の結果、優位差あり)。 3)イミダクロプリド、アミトリプチリン塩酸塩、クロルプロマジン塩酸塩に48時間曝露したメダカを通常の飼育水(脱塩素水)で48時間飼育して、その際の尾ひれの周波数を測定したところ、4-8Hzと24-28Hzの2つの周波数領域で特異的な強度が出現する割合は30%ほど低下した。この低下について優位差は認められなかったが、これらの物質を取り除くことで遊泳の異常は改善される可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メダカの尾ひれの周波数測定の方法を確立することが、研究期間内で研究課題を順調に進めるための最優先課題であった。この方法を確立することができ、対照区のメダカの尾ひれの周波数測定に成功し、また、複数の化学物質(農薬・医薬品等)を曝露した際のメダカの尾ひれの周波数測定にも成功して、有意差検定を含めての成果を挙げられた。これにより、残り2年の研究期間で本研究を順調に進められる見通しがたったため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(令和5年度)に確立した尾ひれの周波数解析ツールを用いて、農薬や医薬品等の化学物質に曝露したメダカの遊泳状態について解析していく。具体的には、尾ひれの周波数に特異的な強度領域が見られる各物質の最低濃度(無影響濃度)や、尾の特異的な強度の濃度依存関係を明らかにする。また、化学物質に一定時間曝露した後に出現する特異的な尾ひれの周波数強度が消失するタイミングについても検討を行う。加えて、確立した尾ひれの周波数解析ツールが適応できるメダカの最小体長サイズを検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由については、購入物品にかかる費用が安価であったこと、成果報告を行う学会の場所が近郊地であったため旅費が安価で済んだことが挙げられる。翌年度は、実験に使用するメダカ等の数が増えてくるため、これを購入する費用に計上して予算執行する予定である。
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Research Products
(3 results)