2023 Fiscal Year Research-status Report
都市環境下における鳥類の行動変化:人馴れは捕食者への警戒性低下を招くか
Project/Area Number |
23K11517
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
濱尾 章二 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, グループ長 (60360707)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 拓洋 独立行政法人国立科学博物館, 附属自然教育園, 一般職員 (30787354)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 都市環境 / 人馴れ / リスク回避行動 / 鳥類 / 捕食者 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工的環境である都市に生息する鳥類は、ヒトとの接触が多い中で生活するため、ヒトのリスクを回避しない「人馴れ」を生じている。リスク回避行動が緩和されると、捕食者全般への警戒性が低下し死亡や繁殖失敗を招くのではないか。本研究では、この疑問に答えるために、東京都心と茨城県農村部で対ヒトと対捕食者のリスク回避行動を比較する野外実験を行う。本研究は、リスク回避行動全般への遺伝と学習の影響について示唆を得ることや、動物写真の撮影やエコツーリズム等の人間活動による野生動物への影響について検討する材料を提供することが期待される。 野外実験は、①ヒトに対する逃避開始距離(予備実験でデータを得ているものに追加)、②タカの飛来を告げる警戒声への反応、③採食場所での捕食者に対する反応、④営巣場所での捕食者に対する反応を計画した。本年度は、③を主体に行った。都市と田舎で逃避開始距離の差が大きく人馴れの程度が著しいスズメを材料に、誘引音声とヘビの剥製を提示し反応を調べた。都市のスズメは田舎の個体よりも誘引音声に強く引きつけられ探索性の強いことが示されたが、ヘビへの反応は都市と田舎で違いが見いだされなかった。このことは、捕食者へのリスク回避行動は人馴れの影響を受けない可能性を示唆するが、実験のデザインから、気温が低くヘビが脅威と認識されなかった可能性や、誘引音声の効果が強くヘビへの反応が現れなかった可能性も考えられた。 また、③の実験に付随して同じ実験地で①逃避開始距離の測定をしようとしたが、対象種の生息密度が低くほとんど測定できなかった。②については、少なくとも実験を試みたいくつかの地点ではタカ警戒声に対する反応が見られず実施できなかった。④については、予定通り11-12月に巣箱を設置し、翌年度の営巣のための準備を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
②タカ警戒声への反応は失敗に終わったが、①、③、④は一定の成果をあげ、次年度以降に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り③と④の捕食者提示実験を、また予定を一部変更して①逃避開始距離データの追加を引き続き行う。 ③は実験デザインを変え、捕食者への接近行動がスズメより顕著なシジュウカラを用い、恒温動物(イタチ科の動物)の剥製を用いて実験を行う。また、④は設置した巣箱に営巣したシジュウカラの育雛期に、雛の捕食者であるヘビの剥製を提示して反応し調べる実験を行う。 ①逃避開始距離については、データが不足している鳥種の生息密度が低くR5年度のみでは十分な追加データを得なかったため、R6年度も継続してデータ収集を行う。
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Causes of Carryover |
補助として雇用した職員が家庭の事情から十分な勤務ができず、主に人件費の支出が少なくなった。次年度は謝金を含め人件費を増やし、補助の人員・労働力を確保する。
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