2023 Fiscal Year Research-status Report
女子受刑者を中心とする受刑者の就労を促進もしくは阻害する心理社会的な要因
Project/Area Number |
23K11674
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山岡 あゆち 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任講師 (60974855)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 受刑者の就労 / 女性の就労 / キャリア / 社会的排除 / 障害者就労 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,当初の計画通り,受刑者の就労を阻害もしくは促進する要因について検討を行うために刑務所出所後に就労している元受刑者及び雇用主を対象にインタビュー調査を実施した。協力を得ることが難しく,2023年度終了時点で,女性4名,男性10名への実施,雇用主6名への実施となった。人数が少ない分,協力可能な対象者に対しては,間隔をあけて3回のインタビューを実施する当事者参加型の計画に変更し,2023年度終了時点で,2回目まで終了した。インタビューでは,過去の就労経験や暮らしぶりのほか,家族の働き方,出所後の暮らしぶりと就労について尋ねている。精神疾患を抱える者や,疾病と就労の両立や福祉的就労についても尋ねている。2~3か月という期間をあけることで,インタビューの1回目と2回目で就労に対する考え方や状況,さらには就労などの意味づけが変化している者も見られ,複数回実施によってより豊かな情報が得られている。また,女性の就労については風俗や水商売での稼働を明らかにする必要性が示唆された。 さらに,当初の計画には加えて出所者が出所後入居する施設である更生保護施設の職員5名及び出所者の就労支援を行う就労支援事業者機構の職員3名にもインタビュー調査を実施し,支援者の視点からの出所者の就労における課題についてデータを収集した。更生保護施設の職員へのインタビューによって,出所者自身の感じる課題だけでなく,支援者からの視点のほか,施設での暮らしぶりや金銭の使い方など暮らしの上での課題について調査を行うことができた。 なお,更生保護施設においては,新たに入所者に対しても当事者参加型の複数回のインタビュー調査を行うこととして,倫理審査などを終えてデータ収集の体制を整えた。 このほかに,2022年に実施していた受刑者に対する量的調査の分析と論文執筆を行い,2024年度の量的調査のアンケート票を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画よりも,女性受刑者や雇用主の協力が得ることができず,インタビュー調査の規模が縮小している。今後もスノーボール形式で引き続き協力者を募る。 一方で,代わりに協力者に複数回のインタビュー調査を実施することでより豊かな情報が得られている。その他,更生保護施設の職員や出所者の就労支援を行う事業者にもインタビュー調査を実施するなど対象を拡大して,より多角的な視点から出所者の就労についての課題について検討することが可能になった。 また,2022年度に申請者が実施していた量的調査の分析を行うことで2024年度の量的研究に向けて順調に調査内容の検討が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度のインタビュー調査については,協力者を得ることが難しいため,スノーボール形式で,出所後期間が経過した人を対象に加えるなどして,さらなる協力者の募集を継続しデータを引き続き収集する。更に,検討する中で更生保護施設に現在在所し,就労もしくは求職活動をしている出所者にもインタビュー調査を実施することとしている。また,女性の就労についてインタビュー調査や過去に実施した研究を分析する中で,風俗やいわゆる水商売での稼働についても実情を明らかにする必要があると判断し,風俗や水商売での稼働についても定性的研究を行う。 2024年度に当初予定していた受刑者に対するアンケート調査については,2023年度の調査結果や過去の調査の分析を生かして質問票の作成を進めており,2024年度中の複数の女子刑務所及び男子刑務所での実施に向けて現在調整をしている。また,この量的調査については,国際比較を実施するため,アメリカの研究協力者とも調査の実施に向けて検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度については,データ収集が中心となり,学会発表については行うことができたなかったため,旅費において特に残額が生じた。また,インタビュー調査については当初の見込みよりも協力者数が下回ったため,謝金等の支払いについても当初の計画を下回っている。2024年度は2023年度に収集したデータの学会発表や,アンケート調査の翻訳やデータ入力などでこれらの差額についても使用する予定である。
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