2023 Fiscal Year Research-status Report
日系女性映画監督の作品におけるジェンダーとエスニシティに関する比較研究
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23K11675
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
山出 裕子 東京学芸大学, 国際交流/留学生センター, 研究員 (10452038)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 日系女性文化 / ジェンダー / 移動文学 / 日系文化 / ドキュメンタリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究初年度にあたる令和5年度では、まず、国内調査施設において文献調査を行った。 特に、理論的枠組みの中心であるカナダのドキュメンタリー映像の専門家であるCatherine Russellの文献を収集し、女性のドキュメンタリー映像の近年の動向に関する文献調査を中心に調査を行った。同氏の著書としては、Classical Japanese Cinema Revisited(2011)やThe Cinema of Naruse Mikio(2008)において、日本女性を対象とした映像文化の特徴について興味深い考察がなされている。現在、これらの文献の分析を現在進めており、論文発表する予定である。 またオーストラリア日本学会において、”Documentary as Experimental Ethnography: A Study of Nikkei Women’s Documentary Films” と題する研究発表を行い、オーストラリアにおける日系女性文化研究の不在とその研究の必要性について論じた。また、カナダやブラジルにおける日系女性文化を映像文化(特にドキュメンタリー映画)を視座に比較した際に、それぞれの文化における女性たちの表象に違いがあることを指摘した。これらの点において、同学会に出席していた国内外の日系女性文学や文化研究者らと質疑応答を行った。また、この際に質疑を行った日本人研究者については、日本帰国後も継続して意見交換を行っており、最終年度に予定している同テーマの研究発表会において発表を打診する予定である。 さらに、初年度に行ったオーストラリアにおける研究対象に関する調査結果については、次年度の研究の中心であるブラジルの日系女性文化の調査分析との比較研究を行うことから、ブラジルの調査分析後に比較研究の論文として成果を発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は初年度にあたり、文献調査を中心に行う計画であったことから、国内の調査施設を利用し国内外の調査を十分に調査することができた。一方で、オーストラリア日本学会での発表が急遽可能となったため、現地に赴く機会があったが、今回は学会発表に焦点を当てていたこと、また初年度であり準備が十分にできなかったことから、現地調査を十分に行うことができなかった。最終年度に再度、オーストラリア日本学会での研究発表を予定していることから、次回は、より多くの時間を現地調査に時間が当てられるよう配慮したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、令和6年度に研究対象地域の一つであるブラジルにおいて現地調査を行う予定である。そのため、国内の学会に参加をし、最近の日系ブラジル文化研究の動向を探るとともに、女性文化の研究がどの程度進んでいるのかを把握したいと考えている。ブラジルでの現地調査を行うにあたり、現地の研究者と綿密に連絡を取りながら、短期間のうちに大きな成果を上げられるよう、事前のうち打ち合わせを十分に行う予定である。また令和7年度にもう一つの研究対象地域であるオーストラリアにおいて再び現地調査を行い、ここでは、学会発表だけでなく、現地の研究者らと綿密に連絡を取り合いながら、十分な成果を上げたいと考えている。また最終年度には、調査対象の日系女性監督のドキュメンタリー映画作品の上映会を行い、小規模な日系女性映画研究に関する研究発表会を開催したいと考えている。以上のようにして、本研究の研究成果をできるだけ広範に国内外に発信していく予定である。
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Causes of Carryover |
物品購入に関して、予定していたパソコンが見積もりよりも安価に購入することができた。また、高額な外国文献のいくつかが国内図書館で閲覧可能であったため、費用を抑えることができた。初年度の余剰予算は、次年度の更なる文献蒐集に使用する所存である。
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