2023 Fiscal Year Research-status Report
論文の注目度から研究者の注目度へ ―書誌情報をより有効に活用するための指標開発―
Project/Area Number |
23K11771
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 鉱 九州工業大学, 情報基盤センター, 准教授(専門職) (00608903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡部 康成 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (10413569)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 正規化被引用数 / 注目度 / 研究力 / マネジメント / 経年変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
論文情報に基づく組織の評価は,研究業績評価と研究力評価の2つに大別することができる.前者は評価対象となる組織名を基に名寄せした論文情報を,後者はその組織に評価時点で所属している研究者名で名寄せした論文情報を活用する.どちらの評価においても,一般的には一定の査読基準を満たした論文情報を収録し,組織名や個人名で名寄せしやすいように整理された,Web of ScienceやScopusといった有償の学術文献データベースが活用されている.ここで,研究業績評価においては正式な機関名や組織名さえ把握していれば良いが,研究力評価を行ううえでは現在在職中の研究者の情報が必要であり,自機関以外の組織を分析に含めることが難しい.在職者情報は各機関で公開されていることが多いが,統一されたフォーマットではないこと,論文に記載されている氏名が必ずしも公開されているわけではないことなどがその理由として挙げられる.そのため,研究力評価は研究業績評価ほど実施されていない.しかし長期的な視野で組織のポテンシャルを測り,改善に活かせるという点で,研究力評価に対する大学をはじめとする研究機関の執行部からの需要は高い. 本研究の目的は,研究者個人や組織の研究の注目度をより公平に評価するための,研究力評価指標の開発である.そのため,まずは前述したような困難を克服し,複数の研究機関を対象に在職中の研究者名で名寄せしたデータベースを構築する必要がある.そこで2023年度は,研究分担者の岡部先生とともに全世界の研究機関を対象に在職者情報を取得する方法を確立し,その情報の収集,およびそれに基づいて個人単位で名寄せしたScopus収録論文情報を収集した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で活用することができる既存のデータベースは存在しないため,それに必要なデータをどのように集め,データベースを構築するかが課題となる.2023年度はこの課題を克服する手法を考案し,それに沿ってデータの取得を試みた.その結果,研究者情報については,全世界248機関に所属する18万人を超える情報を集めることができた.論文情報については,集めた研究者情報を基に取得したところ,重複を排除した直近10年間の論文数が300万報を超えた.そして,これらの取得したデータに適したデータベースの設計と構築も行った.これにより次年度以降の分析に向けた準備が整ったことから,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
被引用数を正規化するにあたり,データをどのような単位でグループ分けすべきかを検討することが,次のステップである.全世界の研究者の論文情報を活用することができれば,論文に関する正規化被引用数,CNCIやFWCIを算出する際に行われているように,同じ研究分野,出版年,論文区分を持つ論文群に分けても,それぞれのグループで十分なサンプルサイズを得られるであろうが,本研究ではその限りではない.そのため,データの持つ特性をしっかりと把握し,グループ分けの単位を最小限に抑える必要がある.グループ分けの方針が定まったら,正規化の基準値を精度よく推定するために必要なサンプルサイズを検討する.さらに,後から基準値や正規化値の経年変化を追えるよう,2023年度に確立したデータ取得の手法に基づいて,研究者情報および論文情報を蓄積していく.
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Causes of Carryover |
(理由)研究機関などへの訪問を複数予定していたが,幾つか都合がつかず訪問を延期したため,予算に余りが生じた. (使用計画)使用目的に変更はなく,研究機関などを訪問する際の費用として活用する予定である.
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