2023 Fiscal Year Research-status Report
光線力学的手法による薬剤耐性白血病細胞の耐性低減化の検討
Project/Area Number |
23K11832
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
宮本 裕一 埼玉医科大学, 保健医療学部, 教授 (00313718)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 光線力学療法 / 薬剤耐性獲得細胞 / P-glycoprotein |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主として光線力学的処置(PDT) による薬剤耐性獲得細胞の耐性低減が可能かどうかを評価するにあたり、耐性細胞と非耐性細胞の薬剤排出能を比較検討した。 試料は国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所より入手したヒト慢性骨髄性白血病細胞由来細胞株 K562 とAdriamycin耐性獲得ヒト慢性骨髄性白血病細胞由来細胞株 K562/Adr を使用した。K562/Adr 細胞はその細胞膜上に薬剤排出トランスポータ P-gp を過剰に発現していることが知られている。 培養液には、10% の牛胎児血清と 抗生物質を含む RPMI 1640培地を使用した。細胞培養は 37 ℃、 CO2 5% の環境下にて行った。蛍光色素には Rh123を使用した(本蛍光色素はP-gpの基質)。なお、Rh123 の濃度調製には上述の培養液を用いた。各細胞の薬剤排出能は、細胞内に残存したRh123の濃度(蛍光強度に対応)をフローサイトメーターにより360分間にわたって測定することによって評価した。 K562細胞の蛍光強度は、360分間にわたって測定開始時の95%以上を維持していた。一方、K562/Adr 細胞の蛍光強度は、測定開始後15分において、すでにK562 細胞のそれの 80% 近く低下していた。その後も蛍光強度は低下を続け、360分経過すると、K562 細胞のそれの数%となった。また両細胞群の間には測定点によらず、有意水準 5% で有意差が認められた (* p<0.05、Student-t test) 。すなわち、P-gp を過剰発現している薬剤耐性白血病細胞の場合、P-gp に基質特異性のある化学物質は、すみやかに排出され、30 分以内にほとんどが排出されるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は本研究で対象とする薬剤耐性細胞の排出能の把握と次年度以降に使用するPDTの励起光源の整備を完了することが目的であった。前者は上述の通り、想定していたよりも排出速度が高いということを把握することができ、今後の実験系の構築において重要な知見を得ることができた。後者については、非線形光学結晶の調整に手間取り、現時点において、必要なレーザー光の波長を得るには至っていないが、既存の励起レーザーを利用により、次年度予定していた実験を進める目処はたっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、PDT による薬剤耐性白血病細胞の耐性低減が実現可能かどうかを、P-gpの薬剤排出能の低下を指標に検討するものであるが、PDTそのものの作用で細胞死が誘導されてしまっては、P-gp の機能に与える影響を適切に評価できない。 次年度以降は、(1)ヒト慢性骨髄性白血病由来細胞株 K562 (非耐性)および K562/Adr (耐性)に光増感剤(ファイザー社製Photofrinを予定)負荷し、PDT 実施後、XTT assayを用いて細胞増殖活性(細胞生存力)を測定し、その結果から薬剤排出能の低減を評価するのに適したPDTの総照射量を決定する。(2)今年度および(1)の結果に基づいて採用したPDT条件にて PDTを実施し、PDTによる薬剤排出能の低減効果を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
PDTの励起光源に使用する付属機器の整備に時間を要したため、追加の結晶材料や検出器を購入するステップには進めなかった。また成果物に係る経費も使用できなかったため、次年度使用額が発生した。次年度は当該付属機器及び光源の調整後、ペンディングとなっていた結晶材料や検出器を購入する予定である。
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