2023 Fiscal Year Research-status Report
包括的力学環境制御に基づく3次元筋疾患モデルの創生と薬効評価への応用
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23K11839
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
横山 奨 大阪工業大学, 工学部, 講師 (30760425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 友浩 大阪工業大学, 工学部, 教授 (30217872)
藤里 俊哉 大阪工業大学, 工学部, 教授 (60270732)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 人工骨格筋 / 収縮力 / 薬効評価 / 伸展刺激 / クリノスタット |
Outline of Annual Research Achievements |
自己収縮能を有する筋オルガノイド(OITem)は生化学・機能面において高い生体再現性を有し、自己収縮能に加えて電気刺激に応答して強い収縮力を示す。本研究では伸展負荷付与装置と微小重力環境再現装置を用いて生体再現性の高い筋オルガノイド周囲の力学環境を包括的に制御することで、薬物や遺伝子操作技術に依存せず廃用性筋萎縮を始めとしたさまざまな筋疾患を再現し、薬効評価モデルとして活用することを目標としている。本研究により、動物実験に依存せず定量的かつ迅速に薬効評価が行える細胞アッセイツールを提供する事が可能になり、患者や介護者の増加傾向にある筋萎縮症の治療や改善の為の研究開発が促進される。 当初計画の概要は下記の通りである。 2023年度:伸展負荷付与装置と微小重力再現装置を用いた筋オルガノイドの培養をそれぞれ独立して実施する。伸展負荷付与装置はほぼ実用段階に到達しており、筋オルガノイドの筋肥大へ最適な伸展パターンを調査する。併せて微小重力再現装置上で筋オルガノイドの培養が可能な容器、即ち液体培地の密閉とガス交換が可能な培養容器を開発する。2024年度:微小重力再現装置への伸展負荷付与装置搭載を実現する。2025年度:筋疾患モデルの機能評価に重点的に取り組み、薬効評価デバイスとしての確立を目指す。筋疾患モデルを用いた薬効評価を実施する。2025年度:筋疾患モデルの機能評価に重点的に取り組み、薬効評価デバイスとしての確立を目指す。筋疾患モデルを用いた薬効評価を実施する。 伸展負荷付与装置と微小重力再現装置を用いた筋オルガノイドの培養については、いずれも当初の想定通りに進捗した。伸展負荷付与による筋オルガノイドへの応答では、一部当初の想定とは異なる結果が得られたが、並行して代替手法の開発に成功しており来年度への影響は少ない。 得られた研究成果を元に、5件の学会発表、3編の論文発表を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
伸展負荷付与装置と微小重力再現装置を用いた筋オルガノイドの培養をそれぞれ独立して実施した。完成した伸展負荷付与装置を利用し、複数の進展パターンを実施した。伸展の有無により培養液中のIL-6濃度の増大が確認された。一方で、進展速度や伸展パターンの違いによる差異は確認できなかった。そのため、静的かつ非侵襲的に伸展距離を変化させる培養プラットフォーム開発を並行して行なった。こちらのプラットフォームでも伸展負荷付与装置と同様の傾向が示された。 また、微小重力再現装置上で筋オルガノイドの培養が可能な容器、即ち液体培地の密閉とガス交換が可能な培養容器を開発した。複数の設計案を3Dプリンタで試作し、最終的にはポリフェニレンサルファイド(PPS)を切削加工して培養容器を作製した。この培養容器は、工具不要で液体培地の交換が可能であり、蓋の中央にはシリコンシートを有しておりガス交換も可能である。この培養容器を用いて、筋オルガノイドを微小重力再現装置上で培養した。対照実験から、筋オルガノイドに微小重量環境を付与することで、その収縮力が減少することを確認した。加えてRNA-seqから、重力応答を示すHSP47が増加傾向にあることを確認し、本実験系および筋オルガノイドが重力の変化を捉えている可能性が示唆された。また、微小重量環境下では筋管形成マーカーであるMyh3、筋分化マーカーであるMyogが減少傾向にあることも確認できた。 以上の成果から、本研究の骨格をなす要素技術の伸展負荷付与装置と微小重力再現装置に関しては実用化への見通しを得た。特に、微小重力再現装置に関しては想像以上に順調に進捗し、一部成果については2024年度中の学会発表を準備中である。同時に、筋オルガノイドの培養プラットフォームを応用した薬効評価技術についても研究を進めており、その成果を2023年度に論文発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、伸展負荷と微小重力を利用した筋疾患モデルの構築に取り組む予定である。ただし、伸展負荷に関しては、静的かつ非侵襲的に伸展距離を変化させる培養プラットフォームでも伸展負荷付与装置と同様の応答を確認しており、研究の進捗状況次第では移行も検討している。 微小重力再現装置上に搭載する培養容器に関しては、よりガス交換率を向上しユーザビリティを向上した新型を設計する。この培養容器では、培養容器内での収縮力測定を実現する予定である。また、実験プロトコルを確立し再現性の向上を図る。 筋疾患モデルの構築について目処が立ち次第、筋疾患モデルと通常培養細胞の薬剤応答を比較することで、薬効評価モデルとしての機能評価を実施する。筋疾患モデルの薬剤応答は、筋オルガノイドの収縮力変化、遺伝子やタンパク質発現量を利用して定量的な評価を実現する。対象としては、筋萎縮原因遺伝子として知られるAtrogin-1やMuRF-1などのユビキチンリガーゼ、マイオカインの一種であるIL-6などに加えて、昨年度のRNA-seqで優位な差を示した重力応答を示すHSP47、筋管形成マーカーであるMyh3、筋分化マーカーであるMyogなどを想定している。 昨年度の論文発表に加えて、微小重力を利用した筋疾患モデルの構築に関する論文発表の準備を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度の所要額2,860,000円に対して次年度使用額381円は1.3%であり、極めて効率的に使用できている。物価および為替レートの変動があるため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は来年度の物価および為替レート変動のバッファとして利用する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Novel Platform for Quantitative Evaluation of Medicinal Efficacy Based on Contractility of Artificial Skeletal Muscle2023
Author(s)
Kishishita, K., Nakamura, T., Mizutani, M., Fujisato, T., Hashimoto, T., Matsui, N., Marrruki-Uchida, H., Iemoto, N., and Yokoyama, S.
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Journal Title
J. Biomech. Sci. Eng.
Volume: 18
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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