2023 Fiscal Year Research-status Report
膵B細胞の再生および増殖を制御する神経シグナル伝達ネットワーク機構の解明
Project/Area Number |
23K11840
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
木場 崇剛 岡山理科大学, 理学部, 教授 (80285139)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 膵B細胞 / 増殖 / 再生 / 神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
インスリンシグナル伝達を阻害するホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)経路に必須なPTEN遺伝子導入によるインスリン遺伝子の発現の変化およびインスリン産生腫瘍におけるDAXX遺伝子の変異を検討した。 I. ラットインスリノーマ細胞株におけるPTEN遺伝子導入によるインスリン遺伝子の変化 PTENはインスリンシグナル伝達を阻害するPI3K経路に必須である。PTEN遺伝子導入1日後にインスリノーマ細胞株のPTEN mRNA発現量は、投与前の発現量の約24倍に上昇した。また。PTENタンパク質は約3倍増加した。この時、Ins2遺伝子の発現は、PTEN投与前の約3倍の上昇がみられたが、Ins1遺伝子の発現に変化は認められなかった。インスリンは受容体の自己リン酸化を引き起こし、それが受容体固有のチロシンキナーゼ活性を引き起こす。この過程は、IRS-1やIRS-2を含むいくつかのタンパク質や細胞の基質をリン酸化する。マイクロアレイ解析の結果、IRS-2はPTENの存在下で増加することが以前に示されている。そのため、今回の研究成果により、PTENはIRS-2 mRNAの量を増加させ、IRS-2が翻訳後に変化するのを防ぐという経路を通して、インスリンシグナル伝達を制御していると考えられた。 II.ラットインスリノ―マ細胞株におけるDAXX遺伝子の変異 今回、これまで報告されていない新しい遺伝子変異 (c. A1459G (p.T487A) in Exon 5)を発見した。この遺伝子は通常テロメア非依存的なテロメア維持機構を抑制するタンパク質をコードしている。今回の解析の結果、DAXXの切断型が発現している腫瘍では、DAXXの切断型変異が癌におけるテロメア維持を促進する可能性が示唆された。本研究結果により、DAXXの遺伝子変化がラット細胞株においてインスリン産生を増強させる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インスリンシグナル伝達を阻害するホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)経路に必須なPTEN遺伝子導入によるインスリン遺伝子の発現の変化およびインスリン産生腫瘍におけるDAXX遺伝子の変異を検討することにより、その研究成果を査読のある海外誌に2編掲載することができた(Acta Endocrinol (Buchar) 2023; 19(3): 277-280, OBM Genetics 2024; 8(1):223) 。
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Strategy for Future Research Activity |
近年,無限の増殖能と全身の細胞種への多分化能を有するiPS細胞から作製される膵細胞を移植することによって,糖尿病の根治を図る再生医療の開発が世界中で研究されているが、ヒト体内の膵島とまったく同等の機能を有するという段階とまでは行っていない。 また、ある種の薬剤で膵B細胞の再生・増殖を試みようとする報告もあるが、これらの薬剤は膵臓以外の臓器にも影響をもたすために、ヒト膵B細胞に直接的に送達する必要があるが、その方法は未だない。当初の予定通り、以前のマイクロアレイの研究成果をもとに、神経因子由来の膵B細胞の再生および増殖因子を突き止めていく予定である。
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