2023 Fiscal Year Research-status Report
Signal-responsive translational control of mRNA drugs
Project/Area Number |
23K11843
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中西 秀之 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (90722885)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 合成生物学 / mRNA医薬 / 翻訳 / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外のシグナル分子を検知し、それに応じてmRNAの翻訳を制御するシステムとして、まずはアルギニンバソプレシン(抗利尿ホルモン)に対する受容体を利用することで、mRNAの翻訳量がこのホルモンに応じて自律的に制御されるシステムを開発することにした。このシステムの構成要素として、アルギニンバソプレシン受容体にタバコエッチウイルスプロテアーゼまたはその変異体を融合させた改変受容体ならびに受容体の活性化時にタバコエッチウイルスプロテアーゼにより分解される改変翻訳制御因子を設計し、これらをコードするmRNAを制御対象のレポーターmRNAと共にヒト細胞に導入したところ、アルギニンバソプレシン濃度依存的にレポーターmRNAの翻訳量が増大することが示された。更に、レポーターmRNAの非翻訳領域の設計を変更することで、上記の場合とは逆にアルギニンバソプレシン濃度依存的に翻訳量を減少させることも可能であることが分かった。 上記のシステムの受容体部分をアルギニンバソプレシン受容体からプロスタグランジンE2受容体やブラジキニン受容体といった他の受容体に変更したところ、プロスタグランジンE2やブラジキニンに応じた翻訳制御も可能であることが示された。この結果から、本研究で開発したシステムは受容体部分の変更により様々な細胞外シグナル分子を検知対象とできると考えられる。 更に、制御対象をレポーターmRNAから抗炎症タンパク質をコードするmRNAに変更することで、実際に治療効果を持つタンパク質の翻訳量についても細胞外シグナル分子に応じた制御が可能であることが示された。 以上の研究成果については、特許を出願済みである(特願2023-108509)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画では、第一年度(本年度)においてはシグナル分子に応じた翻訳制御に必要な改変受容体と改変翻訳制御因子を設計・作製し、改変受容体を活性化させるシグナル分子の有無による翻訳量の差を評価した後、改変受容体と改変翻訳制御因子にどのような変更を加えれば翻訳制御効率を改善できるかを検討することになっていた。これらについては、改変受容体を活性化させるシグナル分子としてアルギニンバソプレシンを用いた検討で全て実行済みである。 更に、計画では第二年度において行う予定であった翻訳制御システムの汎用性の検討についても、アルギニンバソプレシン受容体をプロスタグランジンE2受容体やブラジキニン受容体に変更することで部分的に実行済みである。加えて、計画では第三~四年度において行う予定であった治療用タンパク質の翻訳制御についても、抗炎症タンパク質の翻訳制御というかたちで一つの実例を示すことに成功している。 以上のように、計画では本年度に行うことになっていた検討は全て済ませた上で、次年度以降に行うことになっていた検討も部分的に完了していることから、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本システムの汎用性については既に部分的には示されているが、その一方で、一部のシグナル分子では翻訳制御効率が悪かったり、場合によっては全く翻訳制御ができない例も見つかっている。今後はその原因について調べ、更に多様なシグナル分子に対応できるようシステムの設計を改善する予定である。 また、治療用タンパク質をコードするmRNAの翻訳を制御できるというデータは既に得られているが、それにより実際の治療効果を得られるかどうかの検討はまだできていない。したがって、今後は治療効果についての評価も進める予定である。
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Causes of Carryover |
より安価な試薬に切り替えるなどした結果、少額ながらも研究費の一部を次年度にまわせることとなった。
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