2023 Fiscal Year Research-status Report
改変iPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた標的化ゲノム編集遺伝子治療法の開発
Project/Area Number |
23K11857
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
山崎 吉之 日本医科大学, 医学部, 助教 (90407685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 世志幸 日本医科大学, 医学部, 講師 (90415604)
仁藤 智香子 日本医科大学, 医学部, 教授 (30409172)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / iPS細胞 / ウイルス様粒子 / ゲノム編集治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で開発を試みる改変iPS細胞由来間葉系幹細胞(iMSC)は、炎症部位に集積する特性をもち、ゲノム編集ツールを包含した粒子(VLP)をその場で産生できる。本研究の目的は、このVLP産生型iMSCを用いて、健常組織での非特異的なゲノム編集を抑制して患部のみでの特異的なゲノム編集を誘導し、高効率で安全性の高いゲノム編集治療技術を完成することである。 研究初年度では、まず理研セルバンクから購入したヒトiPS細胞株をiMSCへと分化誘導し、この細胞に対する最適な遺伝子導入法を検討した。その結果、ポリエチレンイミンやLipofectamine等遺伝子導入試薬を用いた化学的手法と比較し、Neon Transfection Systemを用いた電気穿孔法は有意に遺伝子導入効率が高いことが明らかとなった。次に、電気穿孔時の刺激条件パラメータについて条件検討を行った。その結果、既存技術であるHEK293T細胞を用いたVLP産生法と比較し、iMSCのVLP産生量を約30-40%まで引き上げることに成功した。開発したVLP生産技術より産生されたゲノム編集ツール包含VLPの機能性を確認するために、iMSCおよびHEK293T細胞それぞれよりゲノム編集ツール包含VLPを産生し、ゲノム編集効率の評価に頻繁に使用されるβ2ミクログロビン遺伝子を標的としたゲノム編集試験を実施した。その結果、いずれの細胞由来VLPでも同遺伝子に対する60-70%の高い挿入欠損形成率が見られ、iMSC由来VLPの高い機能性が確認された。 以上、研究初年度では、遺伝子導入法を最適化することによりiMSCに対しHEK293T細胞の30-40%のVLP産生能を付与することに成功した。さらに、iMSC由来VLPのヒトゲノム編集能力が、既存法で産生されたHEK293T細胞由来VLPと同等であることを証明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請計画では研究期間前半の一年半(2023年度~2024年度前半)で、1) iMSCにVLP構成因子をコードした遺伝子を導入してVLP産生型iMSCを作製し、2)この細胞から産生されたVLPのゲノム編集能力を、ヒト不死化細胞株および正常細胞株において評価し、3)それらの結果を踏まえ、機能的VLP産生に必要な構成因子の遺伝子を誘導発現系としてiPS細胞に組み込み分化誘導を促し、VLP誘導発現型iMSCを作製することを予定していた。 「研究実績の概要」で述べた通り、1)については既に達成し、2)についてはヒト不死化細胞株での検証を終えたところである。従って、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考える。今後は2024年度前半までに、ヒト正常細胞株における遺伝子編集効率の検証を行い、これらの結果を踏まえて機能的VLP産生に必要な構成因子の遺伝子を誘導発現系としてiPS細胞に組み込む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、現在までの研究の進捗状況は概ね順調に進展していると考える。初年度では、特定の遺伝子群を電気穿孔法によりiMSCに導入し、この細胞に機能的VLP産生能を付与することに成功した。次年度は当初の計画通り、これらの遺伝子群を誘導発現系としてiPS細胞に恒久的に組み込んで分化誘導を行い、安定的にVLPを産生するVLP産生型iMSCの大量生成を目指す。さらに研究期間後半では、この大量生成されたVLP産生型iMSCを、臓器に炎症を生じたモデル動物に全身性に投与し、iMSCが標的患部に集積することを確認する。またその結果として、iMSCが産生したVLPによるゲノム編集が患部特異的に生じているか検証する。これらの実験結果を踏まえ、一過性局所脳虚血モデルラットやブレオマイシン誘導性肺線維症マウスなどの疾患モデル動物に対してVLP産生型iMSCを投与し、そのゲノム編集治療効果を実証する。
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Causes of Carryover |
前述の通り、現在までの研究の進捗状況は概ね申請計画通りに進展しているが、初年度では大規模な動物実験を実施しなかったため計上した研究費に未使用額が生じた。研究計画全体には変更がないため、初年度の未使用額は、次年度以降に行う大規模動物実験に使用する予定である。
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