2023 Fiscal Year Research-status Report
Exploratory studies regarding the early diagnosis and staging of heart failure with preserved ejection fraction
Project/Area Number |
23K11887
|
Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
神崎 秀明 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (60393229)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | HFpEF / 右室機能 / 大動脈弁狭窄症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の一つは、心エコー検査を用いて、駆出率が維持された心不全患者(HFpEF)の右室機能についても評価することである。右室機能は心不全の予後と関連していることが知られている。また大動脈弁狭窄症患者は、長期にわたる左室圧負荷の影響により、HFpEFの要素をもったグループと考えられる。そこで、我々は、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)を受けた大動脈弁狭窄症患者541例を対象に右室機能が予後に与える影響について検討を行った。右室機能の指標として、右室収縮性を鋭敏に反映する右室-肺動脈カップリング比を用いた。 右室-肺動脈カップリング比は、TAVR前に経胸壁心エコーを用いて、三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)を肺動脈収縮期圧(PASP)で割ることにより算出した。TAPSE/PASPの中央値に基づいて、患者は2群に分けて比較すると、Kaplan-Meier解析では、低TAPSE/PASP比群で有害心イベント(心臓死と心不全による入院)の発生率が高かった(log-rank検定 P<0.001)。多変量Cox回帰分析では、TAPSE/PASPが独立した予後予測パラメータとして同定された(ハザード比0.246;P=0.023)。以上より、RV-PAカップリング比で表現される右室機能はTAVR施行患者における有害心イベントの予後予測因子として機能することが証明された。 右室機能の指標として、提唱されているものは数多くあるものの、心エコーの指標においては、その再現性や精度の点で、一長一短があるのが現実である。HFpEFという疾患を対象にした場合、心エコーで非侵襲的に得ることができるTAPSE/PASPの有用性を証明したことに意義があると考える。 この成果については、フィラデルフィアで行われた米国心臓協会学術集会(AHA 2023)にて報告し、現在は論文を作成中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年まで実施していた経カテーテル的大動脈弁置換術患者に関する研究のデータベースを流用することが可能となったため、まずは、心エコーを用いたHFpEF評価から研究を開始した。ただし、本来はカテーテルデータを用いて、より精密に血行動態を評価することが目的であり、この点については次年度に研究をさらに進めていく予定。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在進行中である日常臨床で行っている診断カテーテル検査のデータ収集を継続し、HFpEFの早期診断について研究を進めていく予定である。こちらのデータベースを作成しつつ、経カテーテル的大動脈弁置換術患者に関する研究のデータベースを流用し、まずは成果を出していく方針。
|
Causes of Carryover |
今年度、本研究費で支出予定だった物品等が、他の財源で調達できたため、次年度使用額が生じた。次年度、カテーテルを用いた血行動態データ収集とデータベース作成に使用する予定である。
|