2023 Fiscal Year Research-status Report
Dvelopment and evaluation of a bathroom accident prevention system using an ultrasonic sensor modeled after FM-bats
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23K11945
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊福部 達 東京大学, 先端科学技術研究センター, 名誉教授 (70002102)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 見守りシステム / 浴室内事故 / 溺死予防 / 超音波センサ / FMコウモリ / エコーローケーション / 動体認識 / 材質認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
〇近年、高齢者の「不慮の溺死および溺水」は「交通事故」と「自然災害」を加えた人数を超え、その死者は年間6,900人(2020年厚労省事業)に及んでいる。 浴室設備メーカー等は、この問題に応えるために各種の見守りセンサの研究開発を行っているが、未だに実用化への道は遠い状況である。 〇申請者は、FM超音波を発するコウモリの優れた反響定位機能を調べ、それを模擬したパターン認識方式を研究開発してきた。浴室内はカメラが使いづらく、電磁波はペースメーカー埋込者等への人体影響の問題があるが、提案方式はこれらの問題をクリアしていることから実現性が高い。 〇本研究の目的は、試作済みのFMコウモリ型センサを用いて溺水・溺死に至る過程の動作パターンを予知し、本人や家族に知らせることにより、どこまで事故を未然に防ぐことができるかを評価し、本センサの利用可能範囲を明らかにすることである。 〇本研究の底流には、コウモリの未知の反響定位機能について新しい視点や仮説を提示し、その機能の解明を目指すとともに、その結果を本センサの改良化に活かすという福祉工学的な趣旨とアプローチがある。 〇初年度は、FM超音波システムおよび物体位置推定プログラムについて、精度を上げるための改良化を進め、検出精度を測る実験を行った。その結果、例えば直径25㎜のアクリルポールの場合は250㎝の距離で検出できることが示された。 〇また、シャワー雑音のある浴室内でも、ポールの動きを追従できることが分かった。さらに、実際の浴室内で入浴者による同様の実験を行った結果から、本システムの有効性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、FMコウモリが発射する下降FM超音波(80kHz~20kHz, 1msec)を生成できる素子を開発・改良し、物体からの反射音を高速A/Dによりマイクロコンに取り込むためのハードウェアの改良化を進めた。また、マイコンによる高速信号処理により対象物の位置を推定するプログラムを実装し、反射音波形や時間スペクトルパターンをPC上に表示するシステムを完成させた。 開発システムがどの程度の物体検出能力を有するかを調べるために、色々な直径(2㎜~25mm)を持つアクリルポール(1m)の検出実験を行った。その結果、直径25㎜のポールは250㎝の距離で検出でき、ポール直径と検出距離は比例関係になることが分かった。また、浴室内のシャワー音(80dB)がある中で、動いているアクリルポールの検出・追従精度を調べた。その結果、一般家庭で多用される浴室内において雑音があっても他の物体があっても、入浴者の動きを追従できることが示された。さらに、実際の浴室内で入浴者による同様の実験を行った結果から、本システムの有効性を確認した。ただし、人と他の物体の材質を識別し、入浴者だけを検出する実験と評価は次年度に残された。
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Strategy for Future Research Activity |
①一般的な住宅で多用されている標準的なユニットバスを想定し、浴室内にある物体(浴槽、洗面器、タオル等)と入浴者とを材質の違いでどこまで識別できるかを調べ、入浴者の動きだけを高精度で検出できるようにアルゴリズムを改良する。また、入浴者の動きと連動する湯面の動きにも注目し、湯面動きも考慮した精度の高い動作パターン検出アルゴリズムを開発する。 ②人が浴槽内に沈んでから事故を発見したのでは手遅れになる。そのため溺水・溺死に至るまでの動作パターンの特徴を把握し、事故に至る過程で一般にどのような動作パターンを経るのかを調べる。その時の動作パターンを色々な体形の人により繰り返し再現し、そのパターンを機械学習させ、事故に至る前に警告を出せるようなアルゴリズムを作成する。
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Causes of Carryover |
論文投稿および査読に応えるために必要な機材の購入およびそれを用いた再実験に時間がかかり、再投稿および論文の掲載が年度を超える可能性があったので、論文掲載に関連する費用について次年度使用額が生じた。
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