2023 Fiscal Year Research-status Report
Hinduism of pre-modern era: History of the development of sacred places and pilgrimage
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23K12023
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
虫賀 幹華 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (80972562)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | ヒンドゥー教 / インド / 聖地 / 祖先祭祀 / シヴァ教 / ヴィシュヌ教 / クンブメーラー / プラヤーグ |
Outline of Annual Research Achievements |
西欧近代的な「宗教」概念に基づいた「ヒンドゥー教」が認識される以前のインドにおける信仰形態を明らかにするため、本研究が注目するのは、①ヴェーダに基礎をおくブラフマニズム的な要素と、全体の中の一宗派という意識のないシヴァ教、ヴィシュヌ教的な要素の関係性である。本研究はそれをサンスクリット語で書かれた聖地に関する文献の読解から明らかにしようとするものである。他方で、近現代のヒンドゥー教の営みは、サンスクリット語聖典の記述に重きを置くことで「宗教」としてのヒンドゥー教を構築してきたとも言え、②サンスクリット語文献のみでは捉えられない部分をどう理解するかは本研究の大きな課題である。この2点について、本年度は以下のように研究を進めた。 (A) シヴァ教やヴィシュヌ教の視点で書かれた複数のプラーナ文献における、ブラフマニズムの重要な実践である祖先祭祀の記述を調査した。これらは、祖先祭祀に適する聖地の長いリストを含み、3世紀半ば頃から10世紀頃までに編纂されたと考えられる。グリフヤスートラなどに記載される元来の祖先祭祀とは異なり、祖先祭祀の記述におけるシヴァやヴィシュヌおよびその信奉者への言及、祖先祭祀に対するシヴァ教的実践の優越が見られた。そして、こうした記述が中世後期以降、ブラフマニズムの綱要書(ダルマニバンダ)で教派的な信仰を含まない形で引用されていることについて論文をまとめた。 (B) 北インドの聖地プラヤーグで開催される大規模な祭礼「クンブメーラー」の歴史について考察した。先行研究によれば同祭礼は、もともとプラヤーグで推奨されていた冬季の沐浴の実践が、19世紀後半にすべてのヒンドゥー教徒の正統な祭礼として作り替えられたものである。この見解を受け、その構築に過程において大きな役割を担った、サンスクリット語文献の記述と祭礼を結びつけようとした20世紀のヒンディー語冊子の分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
個人的な理由になるが、出産・育児のため、本年度は研究時間を満足に確保することが難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、プラーナ文献およびダルマニバンダ文献の聖地関連の記述を整理する。同時に、近代以降に作成された、サンスクリット語とヒンディー語の聖地に関する小冊子を収集し、内容を分析する。こうした冊子の研究上の価値は過小評価されており、あまり保存状況は良くないが、ひとまずInternet archiveのサイトなどインターネット上で収集を試みる。インドや欧米の図書館での所蔵状況も調査する。 個別の聖地研究では、聖地プラヤーグと祭礼クンブメーラーを対象としているが、2025年1月から2月にかけて、12年に1度の大きな祭礼が同聖地で開催されるため調査を行う。訪問中に16世紀頃に作成されたと考えられているプラヤーグのマーハートミヤ(縁起譚)の写本収集も試みる。
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Causes of Carryover |
個人的な理由になるが、本年度は出産・育児のために出張することができず、次年度使用額が生じた。また別の研究費が潤沢にあったことも理由としてあげられる。別の研究費は本年度で終了した。翌年度は、海外出張を2回(4月にイギリス、2月にインド)計画しており、多額の予算消化が見込まれる。
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