2023 Fiscal Year Research-status Report
The Ritual Structure of Amaterasu-Ōmikami in Ise Jingū
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23K12025
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
塩川 哲朗 皇學館大学, 研究開発推進センター, 准教授 (70824530)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 神宮祭祀 / 天照大御神 / 在地性 / 御饌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は古代の伊勢神宮祭祀の全体構造を、平安時代初期(804年)に成立した『延暦儀式帳』に基づいて再考した。 古代の恒例祭祀の中心は三節祭(6月の月次祭、9月の神嘗祭、12月の月次祭。夜に行われる由貴大御饌と翌昼の奉幣によって構成されている)であるが、夜の由貴大御饌は在地に居住する奉仕者のみによって自給的に祭祀が営まれ、供えられる食品は地元の神田や近海の海でとれたものが用いられていたことを再確認した。 特に志摩の神戸から送られてきた鰒などは五十鈴川の清流で清められて調理されており、京に居住する天皇の祖神であるにもかかわらず、鎮座地の自然の恵みを極めて重視して祭祀が組織されていたことを明確にした。 また、この奉仕のあり方は外宮の御饌殿(天照大神を筆頭に、豊受大神などの座がある)における毎日の朝夕大御饌とも共通し、内宮・外宮ともに天照大神を祭るために成立した組織であったことを明らかにした。 また、神宮祭祀の中核に伊勢国の国造や県造が全く関わっておらず、京官の大神宮司によって在地奉仕者が監督されていたことは、例えば杵築大社の祭祀が出雲国造によってなされていたことと対比的であり、伊勢神宮は天皇直轄の祭祀場であって、その祭祀は天皇の専権事項であることが反映されていたためであることを指摘した。 内宮の禰宜であった荒木田氏の氏神祭祀は内宮から離れた現・玉城町においてなされ、五十鈴川上流を聖域とする天照大神祭祀とは厳格に峻別されており、外宮においても度会氏の氏族祭祀の要素は実体として皆無であり、あくまで朝廷によって設置された祭祀場であったことは重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画であった神宮祭祀の全体構造の把握及び内宮と外宮の比較検討について、恒例祭祀を中心に一程度以上考察が進んでおり、要点と特徴も分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、伊勢神宮の在地祭祀の構造をより広域に捉えるため、度会郡の神宮所管社の分布・構成についての検討を加えたい。そして、神宮祭祀に対しどの程度朝廷側の関わりが存在していたのかを明確にするため、朝廷祭祀との比較検討、及び斎王の神宮祭祀への関わりなどについて検討を進めたい。
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Causes of Carryover |
研究発表のための旅費の支出が不要となったこと、購入予定の古書が手に入らなくなったことにより残額が生じた。次年度の史料調査及び研究資料の購入に充てる予定である。
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Remarks |
伊勢神宮と海の恵み(講演)、斎宮歴史博物館、2023年11月。古代における伊勢と出雲の祭り(講演)、島根県立古代出雲歴史博物館、2023年10月。祓から見た古代の大嘗祭(口頭発表)、第2回松本塾、2023年8月。伊勢神宮の創祀と祭り(講演)、神田神社、2023年7月。皇太神宮儀式帳・倭姫命世記(解説)、『企画展 祓―儀礼と思想―』(15-16頁)、國學院大學博物館、2023年5月。
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