2023 Fiscal Year Research-status Report
Reconstructing a Critical Theory of Sovereignty: Based on the Encounter of Karl Marx and Carl Schmitt
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23K12036
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
隅田 聡一郎 大阪経済大学, 経済学部, 講師 (70843853)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 主権 / 気候リヴァイアサン / 権威的自由主義 / シュミット主義的マルクス主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、環境問題や地政学的対立などが絡みあう複合危機が常態化する現代において、主権の批判理論を再構築することにある。マルクスとシュミットの邂逅を手がかりに、19世紀以降の主権の思想史を明らかにするためにテクスト読解に取り組んだ。 本研究の着想の一つとなった著作Climate Leviathan(2011)の翻訳(邦題:『気候リヴァイアサン:惑星的主権の誕生』)を完了し、監訳者解題を執筆した。筆頭著者であるジョエル・ウェインライト氏が現在東京大学で研究を行っているため、研究会等で交流を行った。今後、日本国内においてエコロジー危機を含めた主権論と地球規模の気候変動に関する政治哲学の展開が期待される。 また、主権の批判理論の源流として、イタリアのマルクス主義者であるマーリオ・トロンティとアントニオ・ネグリの政治哲学にもアプローチした。特に、現代の左派において大きな影響力をもっている「シュミット主義的マルクス主義」について、これまでの(フランス)現代思想で軽視されてきたドイツとイタリアの思想的連関を、初期ネグリの国家形態論を検討することで明らかにした。 さらに、フランスの哲学者であるグレゴワール・シャマユーの著作La societe ingouvernable(2018)を参照しつつ、マルクスとシュミットの邂逅を端的に示すシュミットの未邦訳テクストStarker Staat und gesunde Wirtschaft(1932)を検討し、シュミットの「政治の自律性」がトロンティなどのマルクス主義者のみならず、ハイエクやオルド自由主義者の「権威的自由主義」にも決定的な影響を与えたことを確認した。特にオルド自由主義はフーコーの新自由主義論との関係で語られてきたが、マルクスのポリティカル・エコノミー批判とも接合可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『気候リヴァイアサン』翻訳原稿の脱稿し、著者であるウェインライト氏との交流をつうじて、英語圏での最新の議論を摂取することができた。また、研究会での批判理論や権威的自由主義に関する報告や、シュミット主義的マルクス主義に関する論文の刊行をつうじて、本研究の総括となる単行本の草稿を書き上げることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、この一年間の研究成果を踏まえ、『ユートピア・アナーキー・主権:マルクスとアナーキスト・コミュニズム(仮)』の完成と刊行を目指す。その際、昨今の惑星レベルでの戦争レジームの常態化をふまえ、「資本主義の地政学」に関する研究をより精緻に展開するべく、よりアクチュアルなテーマを取り込みたい。
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Causes of Carryover |
物品費として主に研究書籍を計上していたが、想定したいたよりも安価で購入することができたため。次年度の物品費として使用する予定である。
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