2023 Fiscal Year Research-status Report
Basic Research on Arts and Crafts of the Koyasan Cultural Area
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23K12056
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
大河内 智之 奈良大学, 文学部, 准教授 (20847818)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 高野山文化圏 / 仏像 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、高野山文化圏(高野山上・山麓及び膝下荘園地域)の文化財調査を和歌山県教育委員会とも連携して、高野町内で5回(金剛三昧院・細川八坂神社・親王院・三宝院)、かつらぎ町内で4回(真明寺・久木地蔵寺・無量寺)、有田川町(境川丹生神社)で1回行い、資料の把握に努めた。また展覧会出陳資料の把握は6回行った。 このうちかつらぎ町花園久木地蔵寺では、平安時代(9世紀)の菩薩形立像、平安時代(10~11世紀)の四天王立像、平安時代(12世紀)の地蔵菩薩立像、正平6年(1351)銘の十一面観音御正体、明徳元年(1390)銘を有する板絵十一面観音像、天正12年(1584)の牛玉法印板木、天正17年(1589)の鉦鼓台及び鉦鼓の中世在銘資料を含む多数の資料を把握した。高野山領花園荘の成立段階にまでさかのぼりうるものが含まれ、また高野山上寺院の僧が製作や寄進に関与したものが含まれ、地域史理解の上で重要な情報を得られた。 また本研究の成果をより実りあるものとするため、高野町教育委員会と協力し、今後町内寺院の悉皆的調査を行うための予備的調査として、金剛三昧院、三宝院、親王院の調査を行った。金剛三昧院では本尊愛染明王坐像が鎌倉時代後期と初めて確認したほか、宿院仏師の新資料として弁才天坐像が把握された。 高野山より移動した資料の把握については、大阪府下の2件4点を新たに確認したほか、文献資料からの抽出作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた高野山領荘園のうち阿弖川荘や六箇七郷、渋田荘内の調査は進められておらず、この点については次年度に地元自治体の協力を得て調査機会を設けることとする。一方で高野山上寺院の調査については、当初の見込みよりも多く行うことができた。また高野山上寺院については今後の調査の機会を得られる見込みも立っており、研究全体として、高野山文化圏の美術工芸資料の把握は着実に進められているといえる。 高野山上より全国各地に移動した美術工芸資料については、まだ把握数が少ないものの、従来の研究では知られていない事例が確認できており、調査範囲を広げることにより把握数増加につながることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
高野山上寺院の調査については、高野町教育委員会との連携により、2024年度から町内美術工芸資料の悉皆的把握調査が事業化することとなっているので、本研究と連動して高野山文化圏の美術工芸資料の着実で効率的な把握を行うことができる。 阿弖川荘内調査は有田川町教育委員会、六箇七郷と渋田荘内調査はかつらぎ町教育委員会との連携により、調査機会を設定して、美術工芸資料の把握に努める。 高野山上から全国各地に移動した美術工芸資料については、高野山真言宗の協力を仰ぎ、アンケート配布等の手法によって全国真言宗寺院への直接の情報収集を行うことを検討している。
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Causes of Carryover |
2023年度の調査事業の中で、高野山金剛三昧院本尊像調査の可能性が浮上し、依頼を行っているところである。高い壇上に安置された大きな作例のため、安全な資料移動のため美術品輸送業者への委託が必要と想定されたことから、初年度の経費を変更し、作業員動員のために次年度に経費を繰り入れたものである。
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