2023 Fiscal Year Research-status Report
中世イスラームの植物学:イブン・スィーナー著『植物論』の形成と影響を探る写本調査
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23K12074
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Research Institution | Ashikaga University |
Principal Investigator |
俵 章浩 足利大学, 工学部, 准教授 (00816788)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | イブン・スィーナー / 植物論 / イスラーム写本 / イスラーム科学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は本研究課題の初年度であった。初年度の計画としては資料の収集を主な作業としていたが、その計画をおおむね達成したと言える。 まず、アラビア語の一次資料の収集については、2023年8月から9月にかけて、英国オックスフォードのボドリアン図書館で行った。より詳細にはボドリアン図書館群を構成する一つの図書館であるウェストン図書館の貴重書室で、アラビア語写本の閲覧と撮影を行った。当初の実施計画通り中世イスラームの植物学に関する資料を対象とした。植物学関連資料の検索方法として、隣接領域の医学に関するアラビア語写本のカタログがすでに出版されており、それを活用することでスムーズに資料にたどり着くことができた。さらに、ボドリアン図書館の写本検索ウェブシステムが2019年に利用した時に比べて格段に改良されており、検索・閲覧請求の作業を円滑に行うことができた。合計で十一冊の写本を撮影し、総ページ数は約五百ページである。また、撮影と並行して、重要度が高いと思われる箇所については読解も進めた。これらはいずれも手稿であるため他の場所で見ることができないものであり、またウェブ上などで公開もされていない。そのため、これらの資料を入手することの意義は大きい。 また、二次資料については、年度を通じて収集して読み進めることができた。重要性が高いものは購入し、絶版等で購入が難しいものは学外から取り寄せて複写した。本研究計画遂行の前に、すでにイスラームの医学について研究していたため医学や薬学に関する資料は所持していた。しかし、植物学はそれ以外にも、自然学や園芸学にも関連するため、それらの領域についての資料を新たに購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては、国外図書館での写本画像データの入手が中核的な作業である。その作業を当初の計画通り実施できたため、進捗状況としてはおおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は前年度に調査したのとは異なる図書館においてさらに資料の収集を進め、その調査に基づく成果を発表していく。具体的には2024年夏季にはイスタンブルの図書館で調査を行い、2025年夏季には国際科学史技術史学会での発表を計画している。
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