2023 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study of Japanese and Korean Modernism
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23K12086
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Research Institution | Iryo Sosei University |
Principal Investigator |
姜 惠彬 医療創生大学, 薬学部, 助教 (90880097)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 比較文学 / 日韓比較文学 / モダニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の計画は、日韓文芸雑誌の比較分析を行い、両国における初期モダニズム文学の全体像を把握することであった。そのため、韓国における現地調査を2回行い、研究成果をまとめた上で、所属大学の機関リポジトリに発表した。 今回の調査で明らかになったのは、日韓のモダニズム研究動向に類似性が見られる点である。日本の場合、モダニズムの発生を第一次世界大戦後に求める欧米中心主義的な文学史観から離れ、関東大震災後を中心に日本の初期モダニズムを位置づけようとする試みがなされてきており、近年、韓国においても、「京城モダニズム」という概念から、初期モダニズムに対する新たなアプローチがあることが確認された。さらに、満州と北朝鮮といった、いわゆる「北」の文化圏におけるモダニズム研究が、日韓両方において活発に議論されていることも分かった。今回は、まず、1930年代を中心に、満州と朝鮮、日本を舞台にして刊行された文芸雑誌と、雑誌を媒体とした文学者同志の交流の様子を整理し、その後、李詩雨の文学活動に焦点を当てた。 李詩雨をテーマに選んだの理由は2つある。まず、李詩雨が同人となった『三四文学』が、韓国初期モダニズムを代表する雑誌である点、また、李詩雨が発表した「絶縁する論理」が超現実主義のマニフェストとして、韓国文壇において先駆的な役割を果たしている点である。一方、「絶縁する論理」の位置付けについては議論が続いており、本研究では、論の性格を限定することなく、日本の文壇との同時代性を視野に入れ、分析した。結果、「絶縁する論理」が『詩と詩論』を参照おり、「ポエジー」という、当時の日本の文壇において極めて重要な概念を踏まえていることが明らかになった。この事実は、文学における「ポエジー」の実践という課題が、日韓の文壇において同時に追求されていたことを裏付けており、今後の研究にも連続していくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、おおむね順調に進んでいる。現地調査においても、調査対象となった資料の入手に問題はなかった。ただ、比較研究の対象とした雑誌の数が膨大なため、すべての資料に目を通すことはできなかった。この点に関しては、今後の研究において補っていく計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、前年度に引き続き研究関連書籍の目録を作成しつつ、京成帝国大学文芸雑誌『清涼』(1925・5~1941・3、全 28 号)の全目録作成と作品分析を行う。『清涼』は朝鮮内に設立された京成帝国大学の文芸雑誌である。投稿者は日本人と韓国人の学生で、すべて日本語で執筆されている。創作と学術論文を含め、学生や教員の時代的考察を反映しる点でその価値を認められ、近年韓国内で翻訳作業が進んでいる。モダニズムの比較文学において欠かせない資料として、雑誌の目録をすべてデータ化した上で、創作物は評論を視野に入れ分析したい。その成果は、日本比較文学会学会で口頭発表を行い、その後、論文として投稿する予定である。 2025年度は、『雅丹文庫未公開資料叢書』を読み込む。成果は者の所属大学の機関リポジトリと個人のホームページにて公開し、最終的には成果を書籍として刊行する予定である。対象となる雑誌は、『雅丹文庫未公開資料叢書2012-京成帝国大学発行雑誌』全4巻、『雅丹文庫未公開資料叢書2012-海外留学生発行雑誌』全11巻、『雅丹文庫未公開資料叢書2013-映画・演劇雑誌』全10巻、・『雅丹文庫未公開資料叢書2012-映画小説・シナリオ・戯曲』全5巻である。
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