2023 Fiscal Year Research-status Report
野口雨情研究における伝記的研究の再構築と「著作年表」「資料年表」の作成
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23K12099
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Research Institution | Ibaraki Women's Junior College |
Principal Investigator |
金子 未佳 茨城女子短期大学, その他部局等, 講師 (30852488)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 野口雨情 / 鹿目野径 / 鈴木善太郎 / 著作年表 / 資料年表 / 東京専門学校 / 『山梨民報』 / 『茨城民友』 |
Outline of Annual Research Achievements |
野口雨情の「郷土茨城における詩作活動」の全容を解明するため、手始めに雨情の作品発表が認められる大正期の雑誌『茨城民友』の現存状況確認作業を行った。図書館や博物館等の公共機関所蔵分(原本・複製本)と古書店で入手した原本を加えた目録(所蔵先記載)を作成するとともに、調査済巻号の目次の入力作業に着手した。 早稲田大学歴史館所蔵資料調査を行った。以前に閲覧した範囲をさらに広げて調査した結果、東京専門学校高等予科(文科)時代の在籍状況を示す記載を見出した。 東京専門学校の同級生である鹿目野径と鈴木善太郎との交友関係について調査を開始した。鹿目野径が記者を務めていた時期の地方紙『山梨民報』を閲覧した。野口雨情と鹿目野径は共に地方紙『常總新聞』で青年記者として活躍し、その後は地方紙『いはらき』を中心に創作活動を展開していたことから、野径が茨城から山梨へ拠点を移した後も二人の関わりは続いたと推測し、『山梨民報』を閲覧したところ、紙面から野口雨情の作品を複数発見するとともに、別の筆名を用いて選者を務めていた事実や、野径や善太郎のほか、雨情と関わりの深い人物の作品や記事も確認できた。野径については、生涯と業績を丹念に調査し、遺稿集『南京町』の所在調査と閲覧を行った。善太郎については、郡山市こおりやま文学の森資料館所蔵の書簡や履歴書を閲覧し、記載内容の解読を始めた。東京専門学校入学から『山梨民報』までの3人の結びつきと創作活動について研究した成果を論文にまとめた(令和6年6月刊行予定)。 栃木県立博物館寄託野口雨情関連資料の調査を開始した。栃木県立博物館及び寄託者の許諾により、栃木県立博物館作成の悉皆調査目録及び画像データを活用できるようになった。 「著作年表」「資料年表」作成のため、継続的に野口雨情作品の初出紙誌調査と蒐集に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「著作年表」「資料年表」作成のため、全国の公共図書館、大学図書館、博物館施設等における野口雨情関係資料の所蔵調査と同時に、明治期~昭和初期発行雑誌のうち、前掲の公共機関未所蔵分を古書店で購入する計画を立てていたが、該当する雑誌の販売がほとんどなく、入手できた資料は想定していた冊数に満たなかった。 『山梨民報』調査は、当初、鹿目野径の山梨民報社在籍期間と執筆記事や作品の掲載を確認する作業で終了とする予定だったが、紙面の閲覧調査により、野口雨情や鈴木善太郎の作品とともに、当時の雨情と関わりのある人物の作品や記事が多数見つかったため、大幅に計画の見直しが必要となった。山梨県立図書館所蔵マイクロフィルムでの調査後は、国立国会図書館所蔵マイクロフィルムを数回にわたり閲覧したが、不鮮明な画像で解読困難な箇所が多く、急遽、山梨県立図書館において確認作業を実施した。 結果的に、『山梨民報』を軸に野径、雨情、善太郎の交友と創作活動の実態を明らかにすることが、本年度の研究の大部分を占めた。そのため、予定していた栃木県立博物館寄託野口雨情関連資料の研究に費やす時間を十分に捻出できなかった。 調査済の『茨城民友』の目次を入力し、所蔵状況とともに公開したいと考えていたが、入力作業を終えることができなかった。 野口雨情の「郷土茨城における詩作活動」の全容を解明するため、公共図書館、大学図書館、博物館施設等が所蔵する郷土資料(明治期~昭和前期発行紙誌など)調査を継続して行ったが、前掲の『山梨民報』調査を優先した結果、計画通りには進まなかった。また、大洗町幕末と明治の博物館において資料調査を予定していたが、調査は次年度以降に先送りした。
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Strategy for Future Research Activity |
『山梨民報』調査は継続し、山梨県内に現存する野口雨情関連資料を収集する。鹿目野径及び鈴木善太郎の山梨民報社における在籍期間の確定とその後の動向を探り、青年期の2人の年譜的事実と業績を明らかにする。 栃木県立博物館寄託野口雨情関連資料は、基本的に栃木県立博物館作成の目録及び画像データで研究を進め、原資料の閲覧が不可欠と判断したもののみ現地調査を行う計画である。草稿などの自筆資料を丹念に読み解き、作品の創作過程を解明したい。 公共機関所蔵の明治期~昭和前期発行紙誌調査とともに、継続して古書店の販売状況を確認し、野口雨情作品の掲載誌(初出)のほか、雨情関連資料の入手に努める。 『茨城民友』の目次入力作業に取り組み、現存する同誌の公共機関の所蔵状況とともに公開する。 北海道や福島県など、雨情が滞在した地域での実地調査を行う予定だが、本年度の『山梨民報』調査のように、友人を介した新聞・雑誌との繋がりでの作品発表や創作活動が明らかになる可能性も考えられる。青年期の雨情に関わりがあった人物を研究対象とすることで、他の地域での実地調査が生じることが想定されるが、適宜計画を見直しながら、周辺の人物まで範囲を広げ、研究を推進していく。 積極的に研究の成果をまとめ、発表する場を確保する。
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