2023 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Representations of Incest in Works of Toni Morrison and William Faulkner
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23K12124
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
吉田 希依 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (70828855)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / トニ・モリスン / ウィリアム・フォークナー / インセスト / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、まずこれまでの研究成果を整理、公表するために、2018年度に提出の博士論文「グロテスクな欲望―トニ・モリスン作品における越境と融合」(原題“Grotesque Desires: Clashes and Fusion between Incompatible Elements in Toni Morrison’s Works” )の英語原稿を大幅に加筆・修正し、日本語での著書出版のために翻訳作業を行った。 2023年12月に同タイトルで朝日出版社より単行本を出版。本研究テーマにつながる点として、特に7章において2022年2月に発表の論文を加筆・修正し、トニ・モリスン『ラブ』における父と娘の近親姦と家父長制の結びつきを明らかにした。また、著書の第一部はフォークナーがモリスンに与えた影響について論じており、本研究の下準備となるものであった。 さらに、2023年度10月の日本アメリカ文学会において、フォークナー『響きと怒り』を取り上げ、インセストの欲望と家族内のジェンダー・ロールの複雑な関係性について考察し、研究成果を発表した。その中で、家族内で割り当てられた役目を果たせないことで生じるジェンダー・ロールの混乱に着目することで、『響きと怒り』の近親姦的関係を再考し、家父長的な家族構造が背景にあることをを明らかにした。現在、発表後の助言等を受け、発表の成果を論文として執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トニ・モリスンの父娘間の関係性について『ラブ』を取り上げ、すでに論文として発表していた内容であるものの、再度加筆・修正を施し、著書に組み込んでフォークナー研究への足掛かりとすることができた。また、2023年度には『響きと怒り』についての研究発表を行い、ジェンダー・ロールの混乱と近親姦的欲望を結び付きを発見し、発表後には今後の研究の方向性について有意義な助言を受けることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度4月現在、2023年度の研究発表の内容について、学会での指摘や助言等を受け、論文として書き直す作業を進めている。同時に、フォークナー『八月の光』を取り上げ、フォークナーの描くジェンダー・ロールについて、インセストとは離れた観点からも考察を予定している。
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Causes of Carryover |
研究テーマに関連する学会への参加が難しく、旅費としての使用がなかったため。今年度、学会への参加のため、旅費として使用する予定。
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