2023 Fiscal Year Research-status Report
世代と文学:再統一後のドイツ語圏文学におけるナチズムの記憶
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23K12134
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高田 梓 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 助教 (00903535)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 世代 / 記憶 / 再統一後の文学 / ネオナチ / 右傾化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に再統一後のドイツ文壇に登場した85年世代の作家による文学テクストを対象に、ナチズムの記憶の継承とその脱却という二面性に着目しながら、文学と社会の相互関係を改めて明らかにするものである。 当初は計4年間の計画で研究課題を進める予定であったが、初年度にあたる2023年度に産休を取得したため、一年間の研究期間延長を申請した。それゆえ、2023年度は主だった研究活動は見られないが、限られた時間のなかで、日本国内での関連する研究会に参加し、最新のドイツ語圏文学に対する知見を得た他、対象となる作品の読解と考察を進めた。具体的には、第二次世界大戦への直接的な記憶を持たない85年世代の文学テクスト、とりわけ自己を創作の題材とするオートフィクションの文学テクストにおける、ナチズムの記憶の所在を分析した。これに関しては、2024年8月に中国・青島で開催される国際学会アジア・ゲルマニスト会議において、「オートフィクションとアイデンティティの探求―クリスティアン・クラハトの<自伝的>小説:『ファーザーラント』と『ユーロトラッシュ』」(Autofiktion und Identitaetssuche: Christian Krachts "autobiographische" Romane Faserland und Eurotrash)のタイトルで研究発表を予定している。既に発表の申請も受理され、研究発表に向けて準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述したように、2023年度は産休取得により研究活動を中断したため、当初予定していたドイツでの資料調査、また学会での研究発表などは延期となった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画を一年後ろ倒しするかたちで進めていくが、2024年度は国内で入手できる文献を対象に、研究を進めていく予定である。主には、ドイツの作家マクシム・ビラー(Maxim Biller, 1960-)の小説テクストを対象に、ユダヤ系作家によるナチズムの記憶の継承/脱却に関して考察していく。2025年度以降は、ドイツでの資料調査を再開し、短い滞在日数のなかで、研究に必要な文献を入手する予定である。具体的には、シュトゥットガルト近郊のマールバッハ文学アーカイブで制限付きで保管されている、ビラーとユダヤ系文芸批評家ライヒ=ラニツキの往復書簡などを調査しながら、研究を進める。
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Causes of Carryover |
産休取得による研究中断のため、次年度使用額が生じた。2024年度からの研究再開に伴い、次年度使用額は必要な文献の収集、また国内外の学会への参加費用に充てる。また2025年度以降のドイツでの資料調査に向け、必要な使用額を検討しながら、計画的に用いていく。
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